今年のクリスマスケーキのデコレーションは、マカロンと白樺チョコとアラザンをディスプレーすると決めていたんだ。
イメージは冬の森の木立ち。
自分で何かを決めておかなければ、あれもこれもこれもと欲張りになって、結局は何も作れなくなっちゃうからね。
(多少の拘束や枠組みも、自由制作物にとっては必要不可欠悪です)。
今回、いじめられちゃったのは、マカロンづくり。
難しい製菓マニュアルではないのですが、自分のオーブンのクセを隅から隅まで知らないと、思い通りにいかないメレンゲ菓子づくりです。
オーブンって、それぞれ個体のクセがあり、しかも、そのクセは年月が経つごとに、強まっていくんだよね。
5年前、10年前と同じ作り方では、「あれ?」なんだかうまくいかなくなっちゃったーという低温乾燥焼きのマカロン。
うちのオーブンは、手前の方、しかも下段のほうが焼き色着きやすい傾向があるんですが、近年、10年目の古オーブン、ますます、そのクセの悪さを発揮し始めました。
これは、火口の鋳型の部分が腐食老朽化している証拠で、火当たりが、ますますムラになってきている状態です。
ついに、初期焼成の高温を170度まで下げて、やっと焼き色が着く失敗のないマカロンができました。
焼き色着いても誤魔化せるように、「紅茶パウダー」とかいう初めての材料で、着色してみたのですが、不要でしたわ。
今回は、焼き色失敗は0でした。
オーブンも、自分と一緒に年取って、ヤベー扱いにくいものに日々変化しているんだな…と感じた次第。
仕事相手の相棒が変化したなら、こちら(のマニュアル)も変化させて、互いにうまく折り合いつけながら、順応していかなければいけないのだと。
しみじみ感じましたわ。
祇園精舎の鐘の音が、グワワーンと聴こえてくる瞬間。
「自分の手で作り出す」ということにとって、他者のレシピもマニュアルも、ある意味、まったく用をなさないんだよね。
これだけの不況、最悪の経済。手作りが、表向きブームだけれど、レシピやマニュアルを外に頼っているうちは、うまく作り出せるわけがないんですよね。
手元の素材や道具との対話。その相手に、何かを教えてもらうしかないのよ。
つらいことだわ。無駄もたくさん出るしね。
でも、失敗の無駄って、ホントは無駄じゃないんだよ。
失敗も、必要悪さね。
思うに、失敗を恐れることが、一番の「不要の無駄」かもしれん。
失敗を恐れるあまり、人は安直にマニュアルやレシピにしがみつく。
レシピのない本を本気で書きたいと思った瞬間。
こんな時代だからこそ、自力で試行錯誤して、自分の何かを生み出すって、とても大切なことかもしれん。
それを教えてくれるのは、本とか、偉そうなものの中にあるのじゃなくて。
自分の生活の目の前にあるものなのかもしれん。
たかが、ボロクソの古オーブンでも、お菓子づくりの何たるかをいろいろ教えてくれるんです。感謝。