カレーパイはちょうちんオバケになっちゃいました

 カレーパンのデニッシュペストリーパイを試作しようとして、嬉々として仕込んだ私。どろどろと噴出しやすいカレーをマッシュポテトに吸収させてフィリング、パイ生地にはパン種を混ぜ込んで浮きを抑制して…と。まあ、机上の論理的モノの考え方はさほど間違っていたとは思えない。

 が、しかし、本日その机上の論理をオーブンにぶち込んで焼き上げたところ。ははははは!開けてびっくり。マッシュポテトの水分がまだ多すぎた様子でして…。
 水木しげるの漫画に「ちょうちんオバケ」ってあったでしょう。破れたちょうちんに目鼻がついて、破れたところから舌をぴろろろろ〜んとだしているやつ。我が机上の論理はあれと瓜二つ、同じ形相になっていて(ホントに破れちょうちんにそっくりだった)、破れた部分からカレー粉色の茶色い舌を「アッカンベー」と出していた。

 あまりにもアホらしいマヌケた光景だったので、そのまま写真に納めようと思ったのだが、私にだってプライドはある。あわてて撮影用にカレー粉色の舌ベロをスプーンで中に押し込んで、破れちょうちん状態のパイ生地を押さえつけて撮影に耐える形態にしたのでございます。

 机上の論理と理想的出来上がりの幻想は、過酷な現実の壁に阻まれて、儚く消えた。

プータローライフ2週間目

 やっと思い腰を上げて、あちこちに「りんこう庵里帰り報告」を送付。気分的に少し安心した。教室再開のレシピも立ち上げたし、仕込むものも仕込み、長い間放っておいた味噌などの発酵食品も手入れを済ませた。夏に手入れを怠った寒仕込みの醤油は当然!完璧にダメにしてしまった…。最初はショウジョウバエが飛び回り始めていた。無視して放っておくと、ショウジョウバエは消滅し…代わりに大きな蛆虫がうごめき始めました。この時点で、すでにとっーくに気持ち悪くて醤油の容器は外に出している。この幼虫たち、大きくなると何になるか知っていますか?カナブンになるのですよ。私の豊富な失敗経験からすると、虫を湧かせた発酵物からは、必ず指の頭ほどもある立派なカナブンが生まれてくる。こうなると、発酵食作りというよりは、昆虫観察とカナブンの飼育作業です。「あのキムチ、どうなったの?そろそろ食べられる?」「あ、あれはカナブンになって飛んでいっちゃった。」まあ、このような異常な会話が成立するのです。本日は、そのカナブンのお子様たちを土に返して、醤油の容器は空っぽになりました。これで、全て我が家夏の「負の遺産」の後始末がついた。

 本日も、まだまだデニッシュ生地(パイ、ペストリー)での「商品開発」(?)を続行中。ともかく、家でゆっくりマイペースでパン生地と触れ合えることが嬉しくてたまらない。(いったい私は何に飢えていたのだろうか?)
 只今、「カレーパイ」というものを試作中。あの揚げパンのカレーパンじゃなくて、ペストリー生地に包まれたカレー(マッシュ)ポテトのパイを作るのです。今年の夏は私のパン作り道具の受難年でした。オーブンに修理2回、ミキサーまで壊す始末。ホイロはすでに何年も前から壊れていて、ローソクを熱源にしている。道具という道具に見棄てられて、やっと今現在の作り方を考案できました。ミキサーもホイロも必要なく、オーブンだけがあれば作れるパン。もう、これはデニッシュしかありませんでしたね。
 製パン性の高い生地が作れなくても、デニッシュ生地ならアイテムの幅を無尽蔵に広げることができますから。実は鈴乃家の鈴木社長との企画を念頭に置いている。お握りと味噌汁のイートインの店と鈴木さんは考えているようなのだが、もし、お握りが売れなかった場合、どのような方策を講じればいいのか…と。実際、今回の立川ルミネ店ではお握りはほとんど売れず、すぐに玄米弁当とサンドイッチに切り替えてしまった。店にはホイロもミキサーも無かったし、また、設備を急きょ揃えろと経営者の潤ちゃんに要求する気もなかった。道具が無いならないなりに、頭を使って考えればいかようにでもモノは作りだせるです。本質的には頭と手があれば何かを作り出すことができるわけですよ。ミキサーにしてもホイロにしても、まともに揃えると何百万もかかってしまうのです。(簡単に元など取れませんからね)。金があり余っていたり借金が趣味なら、買い揃えればいい。
 揃わぬ道具と不足な設備を仮定する中で、派手にショーウィンドウを飾れる商品を考え出さなければ。お握りと味噌汁の店にカフェの飲み物とデニッシュペストリーが同居していても、誰も文句は言わないはず。レストランだって「ライスになさいますか、パンになさいますか?」なんていう台詞が平然とまかり通っているじゃありませんか。お握り食べている人の横で、カフェラテ飲みながらパイ食べている人がいても面白い食風景だと思います。幅はないよりあるほうがいい。ひとつのものにこだわって企画するのは危険だ。最小限の道具と設備で、最大限の商品バリューを生み出せるアイテムとレシピを早急に生み出さなくては。ということで、プーの割には忙しい日々。

これが「クロワッサン生地になっちゃった〜」クロワッサン

 前項のパイ生地(パン種を混ぜたもの)を二日間以上焼成せず、放置した生地で、…・・できちゃったクロワッサン。

 ラク〜。今までの苦労は何だったのか?折り込みパイ生地にパン種を入れるだけ。折り方は従来の教え方(三つ折三回)と違い、四つ折・三つ折・ベンチタイム・四つ折・三つ折(折り込み回数はかなりおおくなる)、つまり折り込みパイ生地そのもの。発酵らしきものは、仕込んだあと、半日〜1日、冷蔵庫で寝かせるだけ。あとは成形してすぐに焼けます。仕込んで翌日に焼成できなかったら、居直って「クロワッサン」。これも、四つ折・三つ折、四つ折・三つ折の折り込み方法なら、二次発酵(仕上げ発酵で7,8時間もかかる)をしいなくてOKなのです。
 ともかく、捏ねて、その日のうちに折り込めば、無発酵生地同様なので、麺棒でのすのも、バターを折り込むのも格段にラクです。あとは放っておくだけ。1日寝かせればパイ生地、2日間以上寝かせればクロワッサンやペストリー生地。

 なぜ、今まで、こんなことに気づかなかったのだろう?これもミキサーのシャフトが折れた大アクシデントのおかげかもしれません。ミキサーがないので、パイ生地やペストリー生地を作るしかなかった。(パイやペストリー、クロワッサン生地なら、ミキサーがなくても仕込めるので、修理してもらえなかった5,6日間、ずっとパイ生地やクロワッサンばかりを集中的に作っていたのです)。

 ともかく、この生地作りを早急に生徒(元・生徒)たちに伝えたい。自分のパン種を自分が熟知して完璧に使いこなしていると思っていたのですが、まだまだ未知の作り方が埋蔵していたなんて、恥ずかしながら、でも、あまりにも嬉しい新開拓です。
 この十年間の教室のみんなの顔が浮かんできます。今でも身近にいる純子やみかに始まって…、ともちゃん、ゆきちゃん、つよしくん、まちこちゃん、やえこ、弘子さん、めぐちゃん、えとちゃん、みつひろ、きよみちゃん、てるみちゃん、みさおちゃん、ゆかちゃん、みほちゃん、ともみさん、もとこさん、…ああ、たくさんすぎる。時間を巻き戻すことができたらいいのにね。ふと、無重力感を感じる軽くて重たい黄昏の時間です。

秋のパイ

 自宅籠城(籠城などと申すよりは雪隠詰めと言うべきであろう)している際に、モンモンと一人レシピを編み上げて、料理教室再開の準備。

 「壊れにくい折り込みパイ」を秋の料理に仕立ててみました。実は、このパン種を加える折り込みパイ生地、仕込んだら必ず翌日までには焼成に入らなければいけないというわがままモノです。(普通の折り込み生地なら数日間は放っておけます)。なぜならば、悠長に放置しておくと発酵が進み、パイ生地ではなくクロワッサンみたいなパン生地になっちゃう!のでございます。なかなかせっかちなパイ作りになるのです。(まあ、クロワッサンになってしまったら、それはそれでクロワッサンの成形を行い、クロワッサンと呼べばよいだけです。→あくまでもいい加減なやつである)。

 パイ生地はお菓子のみならず、料理に幅広く転用できるので本当に便利な生地です。その上、ソース類、ペースト類、ムース、パテなどでいろいろ遊べます。これほど楽しい秋の料理はありませんね。

 さて、本日ご紹介するのは簡単に作れるタプナードと、市販の魚すり身を利用したムース。
 タプナードは黒オリーブ、ケパー、アンチョビをペーストにしたソースです。黒オリーブ、100g、アンチョビ5〜10枚、ペパー30g(一ビン全部くらい)をフードプロセッサーに入れて粉砕します。それをボウルに中に入れて、オリーブオイル100cc〜好みで200ccくらいを少しずつ泡たて器で撹拌して仕上げます。いうなればオリーブとケパーを卵黄に見立てたマヨネーズ作りと同じです。マスタード、塩コショウで味を整えます。オリーブの収穫便りが届く秋です。新モノの実とオイルを使えれば最高なのですが…。
 魚のムースは鍋物材料として市販されている「白身魚のすりみ」を活用してもいいのです。ボウルにすり身150g、卵1個を入れて泡たて器で滑らかになるまで撹拌します。生クリーム120〜150cc(好みで加減)を加え、もったりするくらいまでさらに撹拌します。パイレックスなどの耐熱容器に入れて、茶碗蒸しの要領で15分ほど蒸して仕上げます。今回、私は魚のすり身120g、かにのほぐし身130g、卵2個、生クリーム200ccで作りました。(レシピの数字と材料はいろいろ変化させています)。
 写真、手前、左がきのこソテのベシャメルソース、その右がレバーペースト、奥左がスモークサーモンのサワークリーム和え、中が白身魚とカニのムース、右側がタプナードです。タプナードはパンに添えるほか、ゆで卵や蒸し野菜、生野菜のソースとしても使えます。シーフードのムースはココットなどの器で作って柑橘系のソースを添えると
オードブルの一品となります。
 夏の間は和食一辺倒だったのですが、秋が深まると同時に「二重人格味覚」のように、急にバタ臭い料理が作りたくなるのです。体が冬を迎える準備をしているのかもしれませんね。北海道人の血が騒ぐのです。とたんに油脂や動物たんぱく質の使用に突入します。写真の料理のソース、ムース、ペーストなどは全て長期保存がきくように、空き瓶で作り、脱気状態にして作り置きしています。

「たま」って、思い切り、どブルーだったんだね

 昌弘がもって来てくれた元「たま」のボーカルのオトコの歌声をずーっとウルウル聞きっぱなしなのです。何だかよくしらないけれど「銭湯ライブ」で、一緒にした仕事とか。うらやましーなー。
 懐かしいなあ〜。あのボーカルのオトコの幼子のような、変に純なコケティッシュな甘いダミ声、辛らつなタマ宇宙の歌詞。オトコっていう感じ。そういえば、ランニングシャツ姿の坊主頭のオトコが、リコダーなんかふいていたりしたよな〜…。たま、みんな、元気かな〜…。好きだったんだよなあ…。まさか、まさかの、マサヒロからの、まさか「たまCD」でした。
 宇宙なんだよね。ブルースなんだよなあ〜。思い切り、どブルース、ああ、たま。ゆうかだんも、かなり、どぶるーすだったけど、好きだったけど、今のたまさんも、もっと、どどどブルースだぜえ。ううっ。ところで、ゆうかだんのみなさまはどうなさっているのかな?十年以上も前に畳んだ我が店の「酔いどれライブ」を痛いほど懐かしく思い出してしまいました。パパ、林く〜ん、たまには連絡くださーい。(私のほうは真面目に返信送らないけれど)。

折込みパイとクロワッサン生地の中間的生地作り、成功しました!

 表面の皮1枚でも剥脱すると、ただそれだけで売り物にはならなくなる折込パイ。この欠点を何とか改善したくて…。でも、クロワッサンじゃパンのジャンルに入れられてしまうし。

 折り込みパイ生地にパン種(中種)を混ぜ込み、後は全く普通の折り込みパイ生地を作りました。それを無発酵のパイ生地同様に焼き上げてみますと・・。

 おおーっ!やはり、想定していた通り、パイ生地とクロワッサンの中間的なものになりました。カサカサと羽根のように軽く重なっていたパイ生地は、ほんの少しだけ落ち着いた状態になり、一触即発のあやうさ、もろさから脱却。どことなく中はクロワッサン的な芳香を放ているし、でも、羽根のように軽いパイ生地の1層1層は従来どおり軽いままですし!やった〜!これなら使える。新しいレシピ開拓成功だ。

 ぺとぺとになるまで茶色く炒めたたまねぎをのせてローレヌキッシュにして、さらにその上にチーズとベーコンをのせて焼きました。(たまねぎだけですと焦げやすくなる)。生地の中にもチーズとハムをはさみました。上出来でございます。冷めたら6等分くらいに切り分けます。

 生地は四つ折・三つ折、30分〜1時間ほど冷蔵庫でベンチタイムの後にまた、四つ折・三つ折。折り終えた生地を一晩冷蔵庫で寝かせて、翌朝に焼成。
 無発酵生地の折り込みパイよりも、ずっと風味も味も上。でも、クロワッサンほどはパン生地っぽくはない。ほとんどパイではありますが、ほのかな発酵風味。今後、うちの教室の折り込み生地はこれに変換しよう。二次発酵で7,8時間も待つ必要もないしねえ。折り方は従来とは変わるけれど、ベンチタイムは変わらない。逆に、クロワッサンより、ずーっとこっちのほうがラクで簡単だ。クロワッサンサンドイッチの変形バージョンもいろいろ作れる。クロワッサンそのものならサンドイッチへのアレンジも限られているが、パイ生地となると調理バージョンも無限に広がる!
 嬉しいなー、新しいレシピ。早くみんなに教えなきゃ。なんだか、自分で店をまたやりたくなってきちゃった。他人にやらせるより、自分でやるほうが手っ取り早いし、ましてや、あんな下手なやり方は絶対にしないしね。何をして何をすべきではないかくらい、すでに充分熟知している。人を見ていると、かなりイライラしてしまうのです。なんで、そのくらいできないの〜、なんで、そのくらい分からないの〜、なんで、自分の作りたいものくらい自分で考え出せないの〜作り出せないの〜?もー、ったくう〜。みたいな心境になり、精神衛生上よろしくないです。早い話、ゼロから何かを生み出せる人間じゃないと、店なんかやろうとしても無駄です。料理も考え出せず作り出せないのに、食べ物の店や仕事をやろうと思うのは愚かです。食べ物なら毎日食ってるし簡単だろう程度の安直かつ軽率かつ拙速かつ幼稚な動機や企画では、全ては失敗に終わると思いますね。早い話、作れた者勝ちです。

はい、これがイカ墨煮、すぐ次の記事に移りますけど

 石炭を消し炭で煮しめたたような里芋のイカ墨煮を改めて…第二弾。イカ2はい分のイカ墨と肝臓で煮た里芋の味噌煮。こうなると、ちゃんと芋もイカも、その正体が垣間見られて、さほど衝撃的でもなければアバンギャルドでもない。言うなれば、里芋とイカを泥で煮詰めた…とでも表現したい表情の煮物になるわけでございます。見た目の悪さを気にしなければ、大根などでも作れます。ただし、イカの内臓(スミや肝臓)を使う場合は必ず刺身用の極新鮮なものでなければいけません。少しでも古いものを使うと、この料理は別物になり、生臭くて脂臭くて食べられないシロモノになってしまうからです。
 では、次の画面へと移ります。ローレーヌキッシュのアレンジバージョンが成功したからです。

昌弘のけぞり「里芋のイカ墨煮」

 昨日は久々に店の昌弘が、我が家にご飯を食べに来てくれました。何となくウツウツモンモンとしていたこの1週間、最高の気分転換になりました。
 張り切ってハッスルクッキングでして…。秋刀魚の味噌漬け干し食べにいらっしゃいよ〜…だけでは済まずに。ははははは!昼間から二人でワインを飲んだ。
 この1週間以上も行っていない店の料理が気になって、サジェスト気分で店で作れそうな秋の料理を並べて、それでも済まずに、店で出してはヤバイと思われるものまで作って並べてみました。やはり圧巻は里芋のイカ墨煮でしたね。昌弘いわく「鍋の中を見た瞬間、おもいっきり、のけぞりました」。
 これはイカ墨と味噌、みりん、酒、隠し味にしょうが、にんにく、茶色くなるまでぺとぺとに炒めたたまねぎ少々、赤唐辛子で蒸した里芋とイカを煮たアバンギャルドかつ(味そのものは)トラディッショナルな料理です。味噌味でイカ墨を仕立てるのがミソです。(味噌は海産物の臭みをカバーしてくれるからね)。まさか、あの色白の里芋が石炭のような真っ黒い料理になって出てくるとは想像だにしていなかったマー君です。「見た目はすごいですが、味は最高ですね」。ビジュアル面はともかくとして、味は気に入ってくれたようだ。ただし、かなり衝撃的はあったみたいだけれど。

 イカ墨の料理は、例えば使ったイカの分だけのイカ墨を使うのであれば、さほど真っ黒くろの真っ黒けにはなりません。素材の地の色がのぞく程度の黒さです。刺身などのほかの料理に使い残したイカ墨を冷凍保存して貯めておき、まとめて使うので派手に黒くなってしまうだけです。ということで、本日は使用分だけのイカのイカ墨だけで作った里芋のイカ墨煮を作製しましたが、夕方になってしまったので自然光での撮影不可能となりました。(明日、時間があれば撮影します)。里芋、イカ、味噌、このみっつの組み合わせの味は最高に合うのですよ。無国籍風の里芋料理。みょーにワインと合いました。和でもなく洋でもなく。私の味です。
 インパクトありすぎのイカ墨料理のほかには、季節柄、パイ料理。キッシュロレーヌをアレンジして、この秋に仕込んだアンチョビやベイコンのせて、チーズも使って、「玉葱のメタモルフォーゼのパイ」…(?)。2,3時間炒めた茶色いたまねぎをのせて焼くだけのシンプルなパイが本来なのだけれど、やはり、欲張りにごちゃごちゃと何かをのせて焼きたくなったのです。練りこみ生地ではなく、アター(チャパティー用の全粒粉)でバター折込み生地にして軽く仕立ててみました。これは昌弘に文句無く受けたようです。生地にパン種を練りこんだもので「半クロワッサン半折込パイ」のようなものを作りたくて、これも只今、試作の仕込み中です。このパン的折込パイのキッシュロレーヌを純子やみかにも食べさせたい。(でも、失敗したりして…)。
 昌弘と二人でマンツーマン教室をやったみたいな感じ。すごく久しぶりに教室もどきのレクチャー。なんだかメチャ嬉しかったです。昼から夕方まで飲んで食べて話して笑い転げて。まあ、享楽的とも言える、デキャダンとも言えるであろう。私の真骨頂だ。かまうもんか。ああ、早く教室を再開したい。まあ、こういうことだから、まともな教室ではないんだけれどね。(まともではないという自覚だけはあるのだが、反省及び改善はありえない)。昌弘のおかげで、やっと元気が復活してきた。(昼間から酒を飲んだせいだろうという話もある)。教室の再開、鈴乃家との企画の進行、ボツになってしまった本の企画の原稿の書き直し、・・。2ヵ月半以上もお留守にしてしまった自分本来の仕事の再建にとりくまなければ。(しかし、腰が重いみたい)。

新月の闇夜干し

 日の出が遅くなった。秋の夜長の冷たい雨をひさしの陰で避けながら、新月の闇夜干し。ちなみに十五夜は満月の月光干しというものを作る。天日干しの太陽の光と月の光を両方とも浴びさせて。

 昨日は2,3ヶ月ぶりに娘が訪ねてきた。ここしばらく顔を見せていなかったと思いきや、なんとひと夏、週末の休日のごとに西伊豆の海でダイビングに明け暮れていたそうだ。…海の中には「青い金魚」がたくさん泳いでいるよ。鯵が大群で押し寄せてきて、散らすとバラバラになって逃げるんだけれど、またすぐに群れを作るの。
 どうやら、別世界の宇宙で遊んでいたようだ。どこかムードが変化した麻衣の顔は、少し魚に似てきたみたい。魚と一緒に過ごしていたのだから似てきて当然か。しかし、冬はスノーボードで冬山通い。夏はダイビングで海通いか…。仕事が忙しいのに、どこにそんな体力と気力を埋蔵させているのだろうか?わが子ながら、しみじみと感心してしまう。そういえば、冬の娘の顔は目の周りだけ白く、他は雪焼けして黒光りしていて、雪国の人間の顔になっちゃうんだよなあ。
 ともかく、冬の山も夏の海もお肌と髪にはよくありませんよ…などと、見た目だけを心配しているバカっ母でございます。どうせ、一緒に遊んでいるのは職場の医者連中なので、ケガをしようが病気になろうが、何とかなろうもの。余計な心配はしていないのだが、…ともかく精力的に別世界で冒険してくれちゃうのが、なんともはや。

 西伊豆で今まで食べたことが無いくらい美味しい干物を食べたのだそうだ。やはり、干物は魚と場所か。干物は潮風の中で作られるのがベストなんだろうなあ。
 風よ吹け、りんこう庵の軒下に。麻衣ちゃん写真がめきめき上達して、美しい海辺の風景をたくさん撮影していた。家の中で料理ばかり撮っている私とは違う。転職して、カメラマンになれるかもしれないね、うちの娘。体力で負け、干物で負けて、カメラでも負けた母でございます。

本日は神無月の一日・新月の夜です

 ムーンカレンダー(陰暦)では本日が神無月(9月)の一日。新月です。今年は8月が二ヶ月間もあり、私の誕生月も8月なので、2回もトシを取らされた感じです。
 神無月を迎えて、やっと私の誕生月も過ぎ去って、秋も本番でございます。来月には火の気すら欲しくなることでしょうね。月の水屋は今月から本格的な冬支度の食作りに入ります。私の真骨頂です。漬物、干物、保存食、発酵食、果物や野菜を使った焼き菓子、そして秋から美味しくなる酵母パン作りの数々。六日ぶりに自分のためにパンを焼きました。パン種の調子は上々。昨日やっと修理できたミキサーの回転も軽かった。
 朝一番で焼き上げるパン作りの嬉しいこと。ウグイス色の麹カビに覆われた味噌玉から、今シーズン初の種取りもして、次回の味噌作りに備えました。
 庭の風仕事には、まだ少し早すぎるのですが、やはりこれも我慢できずに、早朝から干物の魚を秋空の下で広げて干しています。(少々気温が高いのが気になる。風も柔らかすぎる)。

 楽しくて長かった私の夏が終わりました。ルミネの調理オバチャンは街を去り、人里はなれた山中のりんこう庵へと帰り着きました。夏の扉を閉めました。私の時間がまた私の中に戻ってきました。幸せです。

 とは言うものの、さほど優雅なのんびりタイムを味わってはいられないのでございます。夏が終わって、秋風が吹いたら…と約束していた鈴乃家のオヤジとの「味噌問題」の課題に取り組まなければいけない。長野かあ…。今度はどんな出会いが待っているのだろうか。今、少しだけ自分を取り戻す時間の空白が欲しいのです。