新月の闇夜干し

 日の出が遅くなった。秋の夜長の冷たい雨をひさしの陰で避けながら、新月の闇夜干し。ちなみに十五夜は満月の月光干しというものを作る。天日干しの太陽の光と月の光を両方とも浴びさせて。

 昨日は2,3ヶ月ぶりに娘が訪ねてきた。ここしばらく顔を見せていなかったと思いきや、なんとひと夏、週末の休日のごとに西伊豆の海でダイビングに明け暮れていたそうだ。…海の中には「青い金魚」がたくさん泳いでいるよ。鯵が大群で押し寄せてきて、散らすとバラバラになって逃げるんだけれど、またすぐに群れを作るの。
 どうやら、別世界の宇宙で遊んでいたようだ。どこかムードが変化した麻衣の顔は、少し魚に似てきたみたい。魚と一緒に過ごしていたのだから似てきて当然か。しかし、冬はスノーボードで冬山通い。夏はダイビングで海通いか…。仕事が忙しいのに、どこにそんな体力と気力を埋蔵させているのだろうか?わが子ながら、しみじみと感心してしまう。そういえば、冬の娘の顔は目の周りだけ白く、他は雪焼けして黒光りしていて、雪国の人間の顔になっちゃうんだよなあ。
 ともかく、冬の山も夏の海もお肌と髪にはよくありませんよ…などと、見た目だけを心配しているバカっ母でございます。どうせ、一緒に遊んでいるのは職場の医者連中なので、ケガをしようが病気になろうが、何とかなろうもの。余計な心配はしていないのだが、…ともかく精力的に別世界で冒険してくれちゃうのが、なんともはや。

 西伊豆で今まで食べたことが無いくらい美味しい干物を食べたのだそうだ。やはり、干物は魚と場所か。干物は潮風の中で作られるのがベストなんだろうなあ。
 風よ吹け、りんこう庵の軒下に。麻衣ちゃん写真がめきめき上達して、美しい海辺の風景をたくさん撮影していた。家の中で料理ばかり撮っている私とは違う。転職して、カメラマンになれるかもしれないね、うちの娘。体力で負け、干物で負けて、カメラでも負けた母でございます。