晴れた!豆鼓を干す

 天敵第一号の草刈軍団が去った直後に、天敵第二号の布亀に突入された。この天敵の元祖は富山の薬売り。現在は大きな薬箱を風呂敷で背中に背負って来るのではなく、ブリーフケースを提げて車に乗ってやってくる。この営業マンの目的は薬売りではもはやなく、サプリメントを売りたくてしょうがないのだ。
「林さん、美容のため、ビタミンCはいかが?」いらん。夏みかんとキーウィが腐るほどあるもん。「では、更年期の味方、大豆イソフラボンは?」お前さん、私が今、何を躍起になって行っているのか教えてやろうか?「では、ダイエット効果抜群、黒酢は?」いくら食べても45キロの体重を30年以上ずっと維持しているぜ。ダイエットなんて無縁だ。
「林さん、せめて風邪くらいひいて、風邪薬とのど飴くらい使ってくださいよ」。よけいなお世話です。

 ということで、午前中から全く仕事にならない相手と闘いつづけ、もはや仕事なんかやる気なし。頭に来たから懸案中の豆鼓を干すことにしました。お日様に干したとたん、乳酸菌をしこたま身につけたお豆さんたちは
プンプンと甘酸っぱい匂いを立て始めました。乳酸菌は糖分を生み出すのですが、(もちろん、それくらいは知ってはいたのですが)、その立ち昇る匂いの甘さに、しみじみ糖化作用を感じました。この糖をエサにする酵母もやってくるのです。すでに酵母もついているらしく、どことなく酒臭い香りまで立ち昇っています。温かくなったのでショウジョウバエがつきやすい。ショウジョウバエも私の天敵の一種です。しっかりと網をかぶせて夕方まで干してみることにしました。林弘庵豆味噌納豆(たった今、そう名付けた)よ、どうか美味しい浜納豆、日本の豆鼓になっておくれ。
 ヨモギは湯がいてアク抜きして、細かく刻んですり鉢で当たり、250gほどを冷凍保存。残りで草もち10個を作りました。全く、仕事にならない一日でございます。

ヨモギを死守!草刈軍団との攻防戦

 ついに私が恐れている天敵「高齢者草刈軍団」が庭に投入されました!これは大家が年に数回「親切心」で派遣してくれる庭の雑草刈りのオジサンたちです。もう、なんでもかにでもきれいさっぱりと草刈してくれちゃうのです。庭に移植したセリもミツバも山ラッキョウも全部です。ハーブ類も全滅させてくれるほどのステキな親切心と勤勉さです!

 早朝に「ざざっ、ざざっ」という覚えのあるヤバイ音を聞きつけました。慌てて庭に飛び出すと、見覚えのあるオジサンが大家の敷地内で草刈を始めていました。今年もついに、攻防戦のときがやってきたか…。このままでは私の大事なヨモギ(正確には大家の敷地に生えていて、私がかっぱらう私のヨモギ)が危ない。
「おじちゃん、そのヨモギも刈って捨てちゃうの?」「そうだよ」。
「私、もらっていい?」「ああ、いいよ。入ってきなよ」。
 フェンスを乗り越えた私を心臓発作を起こしそうな顔で呆然と眺めたオジサンでございました。そして、エプロンの大きなポケットふたつがパンパンに膨れるまで、ヨモギの新芽を摘み取りました。
「ヨモギ団子でも作るのか?」「うん」。「いまどき珍しいな。エライよなあ・・」。(エライと思うなら、私のヨモギを草刈するなよ〜)。

 まあ、こんなわけで、とりあえずは私の大事なヨモギを大量に死守したわけです。

 仕込み第二弾の豆鼓(黒豆トウチ)。2日前からカビの発生を待っているのですが、今回は白カビの発生が遅く、乳酸発酵を始めています。そして、文字通り納豆のような糸を引き始め、なぜ「浜納豆」とか「大徳寺納豆」とか「納豆」の名称がつくのか納得できるほど惚れ惚れするような糸引きを目撃しました。まあ、この程度ではめげないけれどね。この後から必ず麹カビが出てくるから。
 古代中国では塩漬けしたものを引き出して干してカビをつけ、またそれを漬け汁に戻して味をならし、そしてまた豆を引き出して干してカビをつけ…を何度もくりかえして作ったそうです。そのような作業を繰り返すと、たぶん好気性の菌もたくさん付き、乳酸発酵がかなり進むと思います。低塩で作るには古代中国の方式を取ったほうが腐敗を防げるような気がします。ぐずついた天気が晴れ上がったら、第一弾目のトウチを干してみようと思っています。豆味噌チーズを酸っぱすぎるものにしてしまったのも、塩漬け味噌玉を干して乾燥させようとしたときに盛大に乳酸菌を増やしすぎてしまったわけです。その原理から言うと、干すほどに腐敗防止の酸性の菌が繁殖することになります。
 空よ、晴れろ!!