野蕗の土佐煮

 純子ちゃんちの庭に生い茂っていた野性の蕗。見た目は小柄で可愛らしかったのですが、ちゃーんとほろ苦いのです。野の栽培モノとは違う風味があります。
 春の野の香りたっぷりの蕗はそのほろ苦さを逃がさないために、さっと2,3分熱湯でゆでこぼして皮をむき、すこしの間だけみずに放っておくだけの下ごしらえです。(こてこて手間隙かけてしまうと、せっかくの野趣ある風味が逃げちゃうよ)。

 葉と皮を取り除いた蕗、正味350g〜400gほど。4,5cmに切って香りのないごま油(白ごま油)で炒めて、ひたひたより少なめのだし汁、白醤油とみりんを各大さじ1、酒大さじ2、塩小さじ2分の1、濃い口醤油小さじ1を加えて、汁気がなくなるまで煮きります。本枯れ節一握りを粉砕して、蕗全体に絡めて出来上がり。あ〜、春の香り。てんこ盛り1杯のご飯をこの蕗の煮物一鉢だけで全部食べちゃった。

 春ですね。昨日の穀雨は穀雨なんていうのどかなものではなく、春の嵐でしたなあ。
 カビの生態系も春のものに変換しています。冬の間は麹カビが全盛期でしたが、今はすでに酵母菌たちが活動時期に入っています。今まで、緑のカビが素直に生えていた豆糀のカビも、この時期は野生酵母系の白いカビが率先して生えてくるようになりました。野の花にも春を感じますが、カビの世界にも春を感じています。(この感覚は到底、一般人には理解できないでしょうが…・)。白カビの花咲く季節。生徒が「味噌玉に白い毛のカビがもっそりと生えてきた!」と怖がっています。白カビの花を咲かせてしまったのでしょうね。ハハハハハ!「そんなもの後生大事に育てていないで、さっさと塩漬けにして本仕込みしちゃってよ!」。

 微生物の世界も野原の返還と同じようにいつも変化しているのですよ。私の2月のマニュアル、3月、4月…全部変わりますからね。麹カビのシーズンも終わったようなので、今シーズンはこれでお豆さんの発酵物仕込みを完了させます。今後は春の野の料理や、温かい季節の発酵食作りに入ります。