恐るべし!豆鼓の強靭なカビの底力

 漬けては引き上げカビを生やす…を繰り返そうと思っている豆鼓。塩気を含んで漬け込まれたのに、引き上げて放っておいたら、また麹カビが一斉に生えそろってきました。す、すげー。何度でも発芽してやろうというど根性のカビ魂。お日様に干そうが、塩水攻めにしようが、味噌を塗りたくろうが、乳酸菌汁をぶっかけようが…麹カビは不滅です。あんたはエライよ。この間の移行は・最初は酸っぱい匂い(乳酸菌)・次は酒臭い匂い(酵母菌)・今はオヤジの靴下系のムレた匂い(麹菌)。このオヤジの靴下系の匂いが立ち昇ったら、OKです。
 つまり、具体的指針を申し上げますならば、最初は赤ん坊のゲロの匂い、次は二日酔いのため息の匂い、最後の到達点がオヤジの脱ぎたての靴下の匂いです。この三段階を的確に認知しましょう。
 オヤジ靴下になりましたなら、豆は自体が熱を持ってきます。適度に風通しを良くして、冷ましてあげるのが親切っていうものです。ともかく、相手はイキモノです。愛を持って接しましょう。

 さて、この時点で、これを必ず豆鼓にしなければいかねいのかと言うと、さにあらず。適量を取り分けて味噌の中に混入させて黒豆入りの味噌にすると、これまた最高に美味い味噌ができるのです。ただし、味噌汁にすると黒豆の色が入出して餡色になる。お汁粉みたいな藤色の味噌汁になってしまうのです。色はともかくとして、コクと風味が深まり、絶品ですよ。以前、短歌の先生の千村ユミさんという方に差し上げたことがあるのです。彼女は私よりずっと年配で、自分で(新潟の)地大豆を育てて、それで味噌を作っている。それでも「私の味噌より美味しい!どうやって作ったの?」
と、絶賛されました。「大事なのは麹作りです」などと偉そうに答えておいたのだが、オヤジ靴下系のカビの話は差し控えておきました。あの人、マジにダンナの脱ぎ捨てた靴下などを漬け込みそうだから。

 明日の教室は「糠漬け」。この発酵も奥が深いですよ。微生物の世界へいざなう菌遊び。時と場合によっては禁じられた菌遊びも組み込まれています。どぶろく作りなどは豆発酵と比べると赤子の手をひねるように簡単ですからね。でも、まあ、表向きは合法的にいきましょう。