本日も晴天なり

  今日も良いお天気になりそうな一日です。晴れると、やっぱり嬉しいよね。一日、マジメにアスペクトのパン本の原稿書きする予定。

 只今、クライマックスの部分。メソポタミアで発生したパン作りが、古代エジプトに渡って「発酵パン」となる場面です。

 紀元前3000年もの大昔。小麦粉と水を混ぜ合わせて捏ねて放っておいたパン生地が自然発酵して、焼くとふわっと膨らみました。そのパンは、それまでの無発酵パンとは違い、風味もよく食べやすいものでした。発酵パンは古代エジプト人たちを魅了し、それは彼らの大好物の日常食となりました。パン好きとパン焼きに起因して、彼らは他民族から「パン食い人」などと呼ばれました。

 ということで、紀元前の古代エジプトが「発酵パン」の発生地です。なにも加えずに小麦粉と水だけで自然発酵させるパンは、うちのパン種と同じ原理です。ただし、私は初期的自然発酵では酸味もあるし発酵力も安定していないし、十分な柔軟性が生じないと思うので、長期間かけてリフレッシュメントを繰り返し、古代中国の老麺法と同原理に持ち込んで熟成させているだけです。

 でも、もともとの我が「元祖・自然発酵パン種」は、実は古代エジプトなんですよ。発酵パン作りに長けていた古代エジプト人が、そうこう酸っぱくて硬い発酵パンばかり作っていたとは考えられないね。誰がしかは「パン種」状態のリフレッシュメント種を考案していたと思うよ。それを証拠に聖書の「出エジプト記」には、(携帯可能な)パン種の表記が何度も出てくる。

 イスラエル人が、モーゼに率いられてエジプトを出るとき、せかされたせいで、パン種を持ち出すことができずに、パン種を入れずに捏ねた生地だけを持ち出しだ。それを記念する過ぎ越しの祭り(パスオーバー、ヘブライ語ではペサハ)ではパン種を入れない無発酵パンのマッツアを(その期間中)食べるわけです。

 出エジプト記に「パン種」が明記されているということは、やはり古代エジプト人のパン種は初期発酵の酸っぱくて硬い自然発酵パンなのではなく、種継ぎした熟成パン種を使って、美味しいパンを食べていたのは確かだと思います。そのパン種は、うちのパン種とほとんど同じものだったと思っています。

 「小麦、パン種、発酵パン」の視点から、古代文明の考古学や聖書をひも解くと、すごく面白いんだよ。小麦は世界最古の人類の穀物だからね。一粒の麦が時空を超えて世界中に広まった。その一粒の小麦がパンになって人間の糧となった。それと同じものを自分の手で作っている。紀元前9000年。シュメール人の播いた種が、すべての起源か…と考えると、パンと言えども稀有壮大な宇宙が広がる。(と、こんなことばかりを考えながらやっているもんだから、パン教室に生徒が全然集まらない)。

 話を古代の起源説から現実に戻しましょう。何度も申し上げますが、シュトレーン、焼きたてをすぐに食っちゃあきまへんてばあー。せめて1週間くらいは寝かせてくださいよ〜。三日前に焼いたの食っていいか?なんて…もう少し待ちんしゃいよ〜。こちとら、紀元前6500年なんて、かなり前のパンのこと考えているんだから、もー。
 1週間くらい、どうってことないじゃん。2週間だって屁みたいなもんじゃわい。なにせ、元はと言えば、うちのパン種原理ははるか大昔の古代エジプトなんだからね。

 シュトレーンのあのふくよかな形は初着に包まれたイエス様の寝姿という説もあります。どうぞ、すこやかな眠りを!お与えくださいませ。
 ちなみに、イエス様が生誕された「ベツレヘム」は、「パンの家」という意味です。