前ページからの続きで「お酒とみりん」の違いについて

 自家製麹で甘酒を手作りして、放ったらかしにしておくと、最後はお酒になちゃう前ページからの続きです。

 では、お酒とみりんは、どう違うのでしょうか。

 みりんは麹と蒸したもち米を混ぜ合わせ、それに米焼酎を注ぎ入れて半年ほど置いておくだけで出来上がります。液体だけを布などで漉し取り、びんに詰めて2,3か月寝かせて熟成させます。寝かせるほどに、コクも甘さも強まります。
 これも麹の糖化作用を使った調味料。出来上がったみりんに2%の塩を加えて塩みりんにすれば「調味料」なのですが、加えないと・・やはりこれも酒の一種とみなされて、酒税法違反となります。(合法的に作るためには、塩を加えましょう)。

 酒は水、みりんは焼酎が水分で、原材料の米と麹は同じです。ただし、料理に使う場合、酒とみりんは違う作用をします。

 酒は料理素材を柔らかく仕上げつために、みりんは逆に固まらせて身崩れを防ぐために使います。

 酒に種酢(酢酸菌)を種付けして、静置しておくと「米酢」になります。米という身近な、たった一つの素材から、麹や甘酒やお酒やみりんや酢や酒粕を得ることができるのです。米はエライ!のでございます。
 古来から、日本人は米だけで、ざっと数えるだけでもこのような6種類もの調味料を作りだしてきたのです。みなさん、お米をもっと大事にしよう。お米の存在価値を見直しましょう。(などと、くせーことを書くなつーのっ)。

 写真画像、右側はみりん、左側は元・甘酒だったものを漉した汁(?)、真ん中は黒米の元・甘酒だったものを漉した汁です。ワイン同様に底に少し澱(おり)が溜まります。おりは生活活動を終えた野生酵母の死体です。
 酵母菌そのものは有用なたんぱく質の物体です。おりを沈めておくと、この作用で様々なミネラルを生み出し、汁(?)をさらに美味しくします。調味料そのものが旨いと、当然、それを使って作る料理も旨味が増します。

 調味料の本だの、発酵食の本だのを書くような、異常なまでにマニアックな人でもない限り(誰だっけ?)、何でもかんでも手作りする必要などありません。
 せめて、質の良いみりんや酒や酢を(その元が何たるかを頭に置きつつ)選んで使うのがよいでしょう。本来、みりんなどの調味料は、水あめや「アミノ酸系発酵調味料」(=化学調味料)などを使う必要のないものです。

なかなか温かくならないね

 昨日、玄米麹を取りに来るはずだった慧光寺のご夫妻。私が本屋に行っている昼の不在中に来ちゃったみたいで、麹を渡しそこねてしまった。
 まあ、それはそうと、夜に證善ちゃんから電話が来て、彼のお父様が、亡くなられたことを知らされた。数日前に少し快気されたようなことを聞いたので、安心していたのだが。
 お坊さんだけあって、平常と変わらぬ柔和な落ち着いた声だった。しかし、覚悟していたとはいえ、死とは急なもの。看取るほうも、さぞかしお疲れになっただろうに。
 桜の花に見送られ、召されて往かれたか…・と思うと、窓から見える桜の花が、なんだか偉大な哲人に思えてきた。
 證善住職、喪主と僧侶の一人二役であろうから、ここ数日間、ご夫妻は大変になるだろうなあ…・。ご無理なきように祈るのみ。
 味噌づくりどころじゃないですよ。里子に出す麹ちゃんたちは、彼らが少し落ち着くまでしばし我が家の冷蔵庫で寝かせておこう。

 ちなみに、出来上がった麹は冷蔵庫で1週間から10日間ほどは持ちます。ほかの保存手段としては、塩切り麹といって、塩を混ぜ込む方法。これは味噌作りのための麹保存法です。大豆の半分重量の塩を麹に混ぜ込んでおけば、発酵も腐敗もストップさせることができます。
 證善ちゃん「浸し大豆から芽が生えてきちゃった」と焦っていましたが、発芽大豆は発芽玄米と同様、健康には有用なものです。わたしなど、親に送る分の味噌の大豆はわざと発芽さて使うくらいです。(自分自身の不摂生は棚に上げておきます。親には少しでも長生きしてもらいたいですから)。
 発芽大豆にするときの注意点は、浸し水を何度か取り換えてあげること。浸しっぱなしでは、水が発酵して臭くなってしまいます。(かなりイヤな臭い。この臭いをつけてしまっては、大豆の風味が台無し)。

 もし、麹が余ってしまったら。甘酒作りなど、いかがですか。

 もち米を蒸すか煮るかして、さらに適量の水を加えて全粥くらいの水分量になるように煮ます。60度から70度くらいまで冷めたら、もち米と同量くらいの麹を混ぜ加えます。あとは、60−70度くらいの温度を8時間ほどキープするだけで簡単に出来上がります。保温は保温ビン(昔の言葉で魔法瓶とかジャーとか言う)に入れておくだけのことです。
 60度とは、なかなかの高温ですが、これは麹菌がぎりぎり熱死するくらいの温度。甘酒は「発酵」ではありません。麹の糖化力を使って米のでんぷん質を甘くする行為です。60度という高温と時間で全粥状だった米は甘い水分に変わります。これが、甘酒。
 甘酒を2週間くらい放置しておくと、シュパシュパと気泡を立てて「発酵」してきます。これは空中の野生酵母が住み着いて、甘酒の糖を乳酸発酵やアルコール発酵に導いたせいです。(乳酸飲料のお酒みたいで、なかなか美味しい)。これ、もっと時間がたつと、本当に「お○け」になちゃうのよね。(わざと作ると酒税法違反のものですが、「いやーん、できちゃったー!」ものは、…過ちなのですから…、しょうがないでしょう。)(経験をつむと、これも確信犯であるかもしれないが…・)。