パン種起こしのヘルプ第二弾

 これが完成した元種(自然発酵の小麦粉と水だけのパン種)です。保存していたポリ袋を開いて、生地の中を見ると…。気泡が立っているのが見えますでしょうか?

 さて。小麦粉と水だけではどうしてもパン種作りを成功させることができない…という方のためのお助けバージョン(番外版!)です。たとえば、不要な雑菌をつけてしまい、カビなどを生やしてしまう失敗を経験した方のためへ。(よくあるケースです)

 自然落下した野生酵母を育てるという行為は、多分に偶発的要素を持つ不確定な作業です。いろいろな発酵食を恒常的に作る人は、経験的に発酵と腐敗の区別をつける能力があります。が、しかし、そうではない人も当然いるわけです。そのような方が、自然発酵のパン種をゼロから起こそうとしても、良し悪しの区別が判断できず、結局は失敗してしまうようです。
 そこで、まず!です。自然発酵種を自力で起してみようとする方は、たいがい初心者ではなく、すでになにがしかの酵母パンを作っている経験者がほとんどです。(例外もあるでしょうが、でも、とりあえず、そう仮定して、かつ、断定します)。
 パン焼きをする際に、あなたが常日頃使っている種で仕込んだパン生地を全て焼かずに、ほんの少し(20gくらいでいいです)取り残しておいてください。
 それをスタートのスターター(一番最初)にして、小麦粉と水を捏ね混ぜ続けていくのです。このあとの長い過程は拙著「秘伝・自然発酵種のパンづくり」(晶文社)をご覧ください。1ヶ月後には我が自然発酵種に近い質のものに育っているはずです。
 ともかく、最初から腐敗ではなく発酵の方向へ進むように、かなり強引に仕向けて、腐敗という失敗を抑制する手段です。もし、あなたがイーストのパン作りをしている場合でも構いませんよ。一握りの小さなイーストの小麦粉団子を1ヶ月後には自然発酵のパン種に近いものにすることができます。(実は、イーストでパン作りをしている方って、酵母パンに対する引け目みたいなものを心中抱えていたりする場合もあるのですが、絶対に酵母がよくてイーストが悪いなんていうことはないのですよ。パン種などより、作りたいという気持ちのほうが大事ですし、人それぞれの忙しい都合が優先されるべきですから。どんなパン種だって、長所もあれば、短所もあるのです)。
 この変則的番外編(!?)種起こしに関して。あんちょこみたいに最初に使用したパン生地(スタート)に使用した種により、出来上がったパン種の性質はビミューに個体差があります。
 まず、たとえば、イースト生地をスタートにした場合、やはり1か月たっても、イースト臭さやイースト生地の伸びの素直さは消えません。レーズン酵母にした場合は酸っぱくなりやすい傾向があります。ビール酵母にした場合は苦味と酸味を生じる場合があります。麹酵母の場合は相変わらず吹きやすい生地になりますし。
 ありとあらゆる素材で種を起こし、そのパン生地を最初のスタートにしてスターターを起こしてみたのですが、やはり、DNAといいますか、生まれの血筋といいますか、
クセ、みたいなものは後々まで引き継ぐようです。(私はかつて、この実験に、かなり長い期間を費やしました。しかし、実際、すべて自分の手で行ったものなので、主観的ながらも自信をもってお伝えします)。
 いろいろな実験の結果…。自分の心中では(どのみち、最低でも1ヶ月間は種作りにかかるのだから、しょせん、最初から何も入れず、純に小麦粉と水だけで起して、クセのない種を生み出すほうが、最短のやり方なのではないだろうか)と思いました。
 種起こしに、いよいよ困りきってしまった方には、このあんちょこ的番外編を教えております。いうなれば、中種法になるので、たとえイーストパンでも、ぱさつかず、しっとりふわふわした奥深い風味のパンになりますよ。
 チャレンジ中の方、失敗してメゲている方、よかったら、試してくださいね。