押入れの隙間から

 家で一人の昼飯なんて、ろくなもの食っていないのよね。朝食の残り物のメザシと冷やご飯だけ、とかさあ。

 コンビニ弁当の若い人を笑えぬ食事情ですわ。ときたま、自分でも恥ずかしくなるほどです。

 押入れの隙間から、座敷わらしにジーっと見られているような気がすることあるもんね。

 そんなときは、自分のために弁当を作っておくのです。中身はもちろん、残り物の寄せ集めだけど。

 唯一、新規作成するのが、卵焼きです。卵焼きが入ると、ぐっと弁当ムードが出るでしょ。ふたを開けるときに、プーンと弁当らしい匂いがするもんね。

 ご飯の上には梅干しと漬け物と海苔。これで弁当の「ふた開け匂い」が、ばっちりパーフェクトよ。
 ふたを開けた瞬間に、メラメラと食欲がわき上がってくるのです。

 パブロフの条件反射みたいなものですよ。昔、親に作ってもらっていた弁当と同じ匂いを詰め込んでいる。美味しさって記憶だからねえ。

 弁当を作っておくと、二時間目の終わりくらいに、どうしても一口くらい早弁したくなるんだよね。で、昼前に半分くらい食べちゃうの。

 まあ、これも記憶の条件反射で、パブロフの犬なわけです。

 ということで、これから弁当を半分ほど早弁して、5日ぶりに人里のスーパーへ、買い物に出かけます。ぎっくり腰は、ほぼ完治です。やっと靴を履いて外を歩けるようになりました。

 めでたし、めでたし。

 冷蔵庫の中の残り物すら乏しくなっていたぜえ〜。