女郎蜘蛛の明美ちゃんが消えた

  庭の紅葉に盛大な巣を張っていた女郎蜘蛛の明美ちゃんが忽然と姿を消した。その見事な巣も無くなっていた。2,3本の蜘蛛の糸が紅葉の枝に残るのみ。
 やはり野鳥に食われてしまったのだ。もし、家出するのなら巣はそのまま残っているはずだ。家移りするのに巣を畳むなどということは…まさか…するまい。鳥が明美の巣をめがけて突入し、明美をくわえて、ついでに巣も破壊して飛び去ったに違いない。短い期間の私の家族、お庭の住居者であった。いたら、いたで、巣が邪魔で、ちょっと鬱陶しいのだが、巣を壊さないように、明美をあまり驚かせないように気を使っていたのだけれど。しかし、案の定、食われた。食ったのは、からすか、ヒヨドリであろう。(少なくとも私ではない。あの姿に食欲は湧かなかった)。明美ちゃんはきれい好きで、巣に張り付いた枯れ葉やカマキリの残骸をきれいに掃除していた。強い風で巣が破れると、ちゃんとリフォームして、その上、増築までしていた。私よりも几帳面で創造的であった。明美はえらかった。明美のいのちは美しかった。

 明美は足が八本あった。最近、私はたった2本しかはえていない足の片方をしこたま椅子の脚にぶっつけて、足の指をグキッとぶち折ってしまった。第三指がちっちゃな小茄子のように青黒くはれ、歩くと痛くて、しばらくまともに歩けずに、数日足を引きずっていた。粗忽モノにもほどがある。昨日あたりから、やっと普通に歩けるようになったけど、でも指そのものは触れるとまだメチャ痛いまま。山梨県でお寺さんを営んでいる山下さんがバッチ・フラワー・レメディのお薬を大慌てで送ってくださったり、店の昌弘がサロンシップと固定テープを持って飛んできたり。(嗚呼、感謝!)
 麹作りと味噌仕込みの真っ最中シーズンで、「歩けないよ〜」なんていう状態になっちゃ絶対にダメなのに、・・・アホなわたくしめでござった。わはははは!

 結局、昌弘が私の代わりに麹の子守りをしたり、味噌を仕込んだり。味噌仕込みの湧き水汲みも、重石が不足になって大きな石を拾ってきたりも、ぜんぶ昌弘がやってくれた。(嗚呼、感謝!)麹を作ったり、味噌を仕込んだり、湧き水を汲んだりするのは、とても気持ちがいい。「よく、そんな面倒なことやるよねえ」と言われたりするんだけれど、気持ちがいいから、好きだからやっているということをなかなか分かってもらえない。でも、昌弘は「ね〜、すごく気持ちいいんですけど…」。わ〜い!マー君は私の気持ちよさを分かってくれたんだ〜。嬉しかったねー。麹や味噌を生み出して育てることが、面倒なことだなんて感じないんですよ。やりたくてやっているだけ。山梨のお寺の僧侶ご夫婦も「わ〜、いのちがいっぱい」。この言葉も嬉しかったねえ〜!(感謝)。山下さんたちも分かってくださっている。こんな人たちとずっと仲良く一緒に生きていけたらいいのにね。いのちを生み出して育てるという業を自分らの人生を育む仕事そのものにつなげることができたら、最高に幸せだろうなあ…。身の丈と心の丈で生きていけたらいいのにねえ。
 足の指をへし折ってしまい思い通りに動けずに、その上、経済壊滅的状況を自業自得で生じさせ、出るはずの本はまだ出る気配もないし、あ〜あ〜あ〜と、ターザンのように叫びたい気分の中で、幸せと感謝を手のひらでかき集めている。まだまだ元気一杯に生き延びるぞ〜!とか思う。みなさん、足の指を椅子にガツンとぶっつけてはあきまへんで。ドジはあきまへん。