プティ・カンパーニュ 今週のパン

 クセモノヤロー系の自家製粉・内麦を使って、カンパ系を・・。

 今週の教室のアイテムです。

 ひっつこく何度も言うんですけど、ウマいんですよ、これが…。

 しかし、内麦独特ののタチの悪さ、吸水性が低いという「難問」があるわけ。グルテンの高い低いの問題ではない。んなこと、関係ねえ。

 早い話が、水を減らせばいいだけの単純な話なんですけどね。

 でも、質の良いものを作ろうとするならば、その程度の単純なレベルでは済まされないわけよ。

 という内容の教室レクチャーを予定しております。

 農水省の条件や基準をクリアして、補助金をもらえるレベルの国産小麦と、そうではない規模の小さい麦畑の国産小麦とでは、質にも価格にも大きな違いが出てきます。

 私たちは、農政の基準をクリアして国からの補助金が出ている小麦をごく当然のような気持ちで、この値段、この味、この質…と思いながら、外麦も内麦の粉も使わせていただいていますね。それを使って、パンやお菓子を作っているわけよ。

 でもね、もし国からの補助金が出なければ、麦と言え、おなじみ価格の4,5倍はするものなんです。

 そうなれば、当然、パンや、お菓子の価格も4,5倍に跳ね上がる。今まで、300円で買っていたパンやお菓子も、1200円とか1500円になるわけよ。

 1箱300円の煙草が、1000円に値上げされると、みんな、ざまーみろ〜とか喜ぶでしょ〜なあ…。

 私の場合は、1個300円のパンやお菓子が、1500円に値上がりしたら、ざまーみろ〜とか、メチャ喜んじゃうわー。ぜひ、そうなってもらいたいものよっ。そのほうが、国の収入のためにはいいんじゃないの?パンやお菓子なら、不健康で少数派の煙草なんかよりも、よほど大多数なんだからさ。国は増収確実よ。日本再建策!

 小さな麦畑は、農政の基準や条件をクリアするのは難しいわ。

 高かったら、どんどん買い手も作り手も離れていく現状があるし。

 頑張って麦畑をやっていくのが辛くなると思う。

 でも、そういうところの小麦がやけにウマかったりもするのよね…。

 今の健康ブームになった「国産小麦」信仰を私は、あまり嬉しく思っていないわ。

 いえ、すごく喜ばしいことなのですけどね。

 でも、その陰で、淘汰されてつぶれていく小さな麦畑があるの。

 私は、ホントはね、昔から、そういうもののために何かを作り出したかったの。

 マイナーな小さなもののために、何かを造れる人間になりたかったのよ。

 メジャーなものからすれば価値ないものが、実はマイナーなものの中にこそ、すごい価値があったりする場合もあるじゃん。

 なりたい自分になれるかな?

夜鳴き蝉

 昨日、日が暮れて暗くなってからのことなんですけどね。

 ジージージーって鳴く「蝉の声」が、庭の木から聞こえてきたのよ。

 幻聴とか気のせいではないわよ。

 私より先に、試食担当部長が気づいて、「あ、蝉が鳴いている!」と言ったんですもの。

 まさか。夜でしょ。まだ四月でしょ。蝉の声が聞こえるわけないじゃん。とか思って、台所から奥に行って庭に面した窓辺によれば…。

 ジージージー♪と、確かに聞こえてくるのよ。草藪の虫の声ではないわ。明らかに木にとまって鳴いている。傍に行くと人の気配を感じてか、ぴたっと鳴き声をとめる。静かに離れると、また鳴き始めるの。

 蝉とそっくりの鳴き方だったわ。でも、体が小さそうな声量だった。アブラゼミとかミンミンゼミのように大きな体の蝉の声ではなかったわ。

 部長いわく「これって、春ゼミなのかな?」。

 春蝉という言葉を初めて聞いたわ。知らなかった。パソコンで「春蝉」を検索してみたわよ。

 4月頃から出てくる小型の蝉。マツ林や、ブナ林、またはその近辺に生息する。

 と、まあ、こんな感じで「4月」「小型」までは当てはまったけれど、近辺にはマツ林やブナ林などはないわ。その上、日照時間にしか鳴かないとも書いてあった。

 夜暗くなってから鳴く蝉なんか、聞いたことも読んだこともないしね、確かに。ときたま、夜中に「ジッ!」と一発鳴きをする蝉はいるけど。

 あれはいったい何だったのだろうか?蝉以外の羽虫の鳴き声とは到底思えない。

 「異常気象による天変地異の前触れかしら!」と、私が嬉しそうな顔で言うと(→楽天的な天変地異愛好家)、部長はヤーな暗い顔になったわ。

 丸山(私の住んでいる高台の名前よ)が噴火するとか。東元町(私が以前住んでいた番地よ)から石油がわきだし油田になるとか。駅ビルの地下から温泉が湧き出て、駅ビル全部が温泉浴場街になるとか。国分寺市だけが天空に浮上し、ラピュタになるとか。

 ともかく、あれは蝉の声だった。春蝉か否かは分からないけど。

 夜鳴き蝉という名前にしておくわ。

 新種よ。

 まだ、世界で発見されていないものよ。うちの庭にだけ生息する未知の生物。

 そのうち、学術誌で取り上げられて、有名になるかもしれないわ。

 ねこたま粉で作ったパルミエ(和名・源氏パイ)を夜鳴き蝉の代わりに載せておくわ。夜に鳴かないけれど、ウマいわよ。

 ときたま、夜になったら笑うけど。