初物・ちりめん葉山椒

 ちりめん山椒を葉山椒で作ったものが好きです。

 辛すぎないし、噛みごたえが優しい。

 酒、だし汁、塩で煮て、醤油とみりんは少しだけ。

 でも、しっかりと佃煮風に塩気強めの味付けにして、ぱらりと炊き切ります。最後は鍋を揺すって汁気を飛ばします。

 こうすると、熱々ご飯に混ぜ込んでもべたつかせずによく合いますし、冷ややっこや揚げだし豆腐にトッピングしても、見た目が美しい。

 ちりめん山椒の混ぜご飯おにぎり、新わかめの味噌汁、竹の子の煮物と、卵焼き。こんなシンプルな組み合わせの献立も大好き。

 ザルいっぱいにあった葉山椒は、加熱と同時に思い切り凹みます。でも、いい香りは残りますよ。

 ちりめんだけ先にふっくら炊いて、後半に葉山椒を加え、一煮して仕上げます。

 パンと一緒に送るため、2,3ビンほど脱気びんづめ。北国山奥のY子さんに、春の香りを届けるために。(クマさんが、冬眠から目覚めたそうです)
 手首を故障して「何もつくれず、ぐやじい〜」N子さんに春飯を届けるために。(手首を固定しているそうです)。

 パンファミリーたちも、それぞれの場で、良いことあったり、悲しいことあったり。同じ春という時空の中で、それぞれみんな違う時間の流れを過ごしているようです。

 山椒を炊く香りを嗅ぐと、しみじみ春の時間の流れを感じます。桜の花は、そわそわするような春の時間ですが、山椒の香りはしみじみした春の時間。

 会えない人たちのことが心に浮かび、どうしているかと思えててしょうがなくなる春の揺らぎ。

 我が家の春の時間をほんの少し詰め込んでみます。