サワードー

 明日のパン教室アイテムはライ麦パン。ロッゲンリング(ライ麦の輪)です。これは、どでかいベーグルみたいな形態。

 ライ麦パンを作るためには普通「サワードー」と呼ばれる酸っぱい(酸化させた)生種生地を使います。これはライ麦粉と水を長期間混ぜ合わせ続けることで、生地を酸化させphを下げた(7以下にしたもの)生地です。ライ麦粉という特殊な素材をパンにするためには、このphを下げた酸っぱい種が必要になります。

 なぜサワードーが必要になるのか、と申しますと…。ラム麦にはペントザンという成分がほかの材料よりダントツに多いからです。(ペントザンはライ麦だけではなく、小麦だって持っていますが)。
 この「ダントツに多いペントザン」がライ麦パン作りのクセモノになるのです。ペントザンの成分の一部は水と結びつき、べとべとの状態になる性質があります。

 ライ麦パンを作ろうとして焼きあげたとき、中が羊羹みたいな生焼けのような状態になり、パンというよりは固い焼き団子(?)みたいにしてしまった経験はありませんか?煮ても焼いても食えないような登山靴みたいな「失敗ライ麦パン」?いや、まさしく登山靴そのものです!この失敗の原因がペントザンです。

 ライ麦パンを登山靴にしないためには、このペントザンを「言うことを聞いてくれる良い子ちゃん」にせねばならないのです。
 しかし、相手は「成分」なので、なだめても、すかしても、なでなでしても、言うことを聞いてはくれません。言うことを聞かせるために、酸化種が必要になるのです。この酸化種が「サワードー」です。

 当教室のパン種はある意味、サワードーと同じ原理で生み出したものです。使う材料をライ麦粉ではなく白い小麦粉に代え、酸味を極力抑えたものです。(酸味を抑えているとは言っても、phは7より低くして酸性状態を保たせています)。あえて名前を相対的につけるのであれば、「ホワイトドー」とでも申しましょうか。早い話、この我らがパン種だけで、いとも簡単にライ麦パンも作れてしまうのです。手間暇かかるサワードーをわざわざ作る必要はありません。

 サワードー作りはなかなかビミョーな作業でして、酸度を下げれば下げるほど良いというものではありません。(下げようと思ったら、温度と時間でいくらでも下げることもできますけれどねえ…)。

 登山靴にはならず、ライ麦パンらしきものが焼きあがったけれど、食べてみると酸っぱすぎて臭くって、…やっぱり食べられなかった…。という経験はありませんか?
 これはphの下げすぎ、または、下げようと努力(?)しすぎて、ほかの雑菌などを付けてしまったせいです。(乳酸菌だけではなく、酢酸菌も過多に増殖させてしまったせいです)。phを下げて酸っぱくすると、腐敗に導くような雑菌は確かに抑え込むことはできます。
 しかし、だからと言って、いくらでもphを下げれば良いというものではないのです。味という点で考えると、ほっぺが萎むほど酸っぱいパンは美味しいとは言い難いものがあります。(糠漬けだって、少し酸味があるくらいのものが美味しいけれど、酸っぱすぎるものは美味しくないでしょ。あれと同じ理由ですよ)。
 パン種のphを7以下に保ちつつも、過多の酸味は抑えるだけ抑えるのが、当教室のパン種方針です。

 今日は朝からチョーいい気分。高橋大輔クンが、世界選手権で銀メダルを取った!やった!やったねー!!おめでとー!(あいかわらず、あの若い男にお熱のわたくし)。今度は金メダルだな。むふふふふ。

 喜んでばかりいないで、まじめに自分のHP作りにでも取りかからなければ。