カボチャ漬け出来

 かぼちゃと米糠を混ぜ合わせた漬け床に、軽く干した大根を漬け込む浅漬け沢庵が、カボチャ漬けです。カボチャから甘味が出て、サクサクの軽い食べ口の沢庵になります。
 11月以降からの寒い時期に仕込むものです。今、作ると、まだ温度が高いので少し酸っぱくしてしまいます。(私は撮影を焦っているので、時期早急なのは知っているのですが、作ってしまいました。そして、とーぜん、酸味があるわけです。皆さんは、まだ、やってはあきまへんでえ。今月の終わりか、11月くらいにね)。

 蒸したカボチャを冷まし、米糠を少しずつ混ぜ込んでいきます。(カボチャの水分によるので、糠が何割とは明言できません)。粘土くらいの固さになったらOKです。重さを計り、もし漬け床が500gあるようでしたら大匙3ほどの塩と大匙2ほどの砂糖を混ぜ加えます。
 そこに数日干して少ししんなりした大根を漬け込んで重石をのせておきます。1週間もすると水が上がってきます。10日目以降から食べ始めることができます。いうなれば、即席沢庵みたいなものです。
 私は夏の糠漬けの床も少し混ぜ加えます。こうすると味熟れが早いし、うまみも増します。
 米糠の発酵に加えて、かぼちゃが発酵を促進します。ほのかな酸味は乳酸発酵。そこに甘味と塩味が加わるから、シャクシャクポリポリ、やめられないとまらない。食べすぎを防ぐため、塩気と酸味を少し強めておくほうがいい。薄味にすると、大根丸ごと1本食べちゃった…!なんていうことになりかねない。

 健康志向から乳酸菌飲料やヨーグルトなどの乳酸菌が、善玉菌などと呼ばれて注目されているようです。でも、日本古来からのコメや野菜や豆の乳酸発酵にも、もっと注目してもらいたいです。乳製品など動物性の乳酸菌よりも、日本の植物性の乳酸発酵のほうが、私たちの体質に沿うているような気もします。

 一説によると、口から摂取する乳酸菌は生きて腸まで届くことはなく、大概は生まれながらに持っている常在菌の生態系に打ち負かされてしまうという説があります。
 日本人が遺伝的に体内保持している常在菌を健全に育成することのほうが、菌食にも無駄がなく、生体の恒常性維持にかなっているかもしれません。
 健康食品の乳酸菌を摂るよりも、当たり前の普通の食事で、味噌や漬物や干物を作って、毎日食べておくほうが、腸内環境がととのうかもよ。なにせ、わたしなんざあ、毎日出ていらっしゃるものだけは、実にご立派な健康優良児だからねえ。写真をのせて自慢したいぐらいですが…やめておきます。

 ということで。乳酸菌がそんなにエライというのであれば、外来の乳製品よりも優れている日本のコメや野菜や豆や魚の自然乳酸発酵食品に、もっと光を!ご加護を!愛の手を!

涼しい夜

  過ごしやすい秋の夜長。夜明けも遅くなりました。

 やっと晶文社のほうの原稿をおおかた書き終えました。ホーーーッ…。まだ、脱稿したというわけではないですが、でも、ほぼ書き終えた。しみじみ、ホーッ。
 挿入する写真も全部は撮り終えていないし、プリントアウトもしていない。書いたものをメールで編集者のパソコンに送り込んでいるだけ。近々、全部をやりあげてしまわなければ。ラストスパート。もう一息だ。
 やり終えたら、次はアスペクトの本の原稿書きだもんね。しんどいけれど、嬉しいなあ。書けるって、幸せだなあ。ありがたいなあ。やりたいことをやっているときだけ、機嫌がいいし体調もいい。まったく、ゲンキンなやつだ。毎度、2,3本くらい企画が通っていれば、わたしゃあ極楽ビンボで幸せだけどね。(自業自得です。貧しくとも愚痴すら言うつもりはないです)。

 一度でいいから、ムック誌作りも経験してみたいです。今はムックも市場過多になっていて余剰しているみたいだけれどね。(だから、ハードルは高いでしょうけれどねえ…)。
 売れ線狙いのはやりものじゃなく、発酵食のシブーイやつ。永久保存版みたいなやつ。今は誰彼が簡単に作らないようなものを。本にして残しておかなければ、すたれて無くなってしまうような日本古来のものを。都会生活のスペース無しの環境を基準にして、小さなマンションやアパートの台所でも、失敗なく無理なく作れる方法を。ジジババ年代が残してくれた日本の美味しさの遺産を。本当に食作りとして価値あるものだけを。
 全集ものなどでは(農文協などから)いいものが出ているけれど、2千いくらする全集本を全部買い揃えることができる人は多くはないと思う。
 選りすぐりのアイテムを1冊のムックにできればなあ…。写真がたくさんついたハウツー本のムックを作りたいなあ〜。どこか、モノ好きなへそ曲がり出版社はないものだろうか。発酵食なら、季節を順守しなくちゃいけないから、1年間はかかるし。どこか、相談にのってくれそうなところをこれから開拓していこう。
 頑張って書き続けていけば、そのうち、どこかと新たなご縁でも開拓できるべえ。今書いている本が次なるご縁を生み出しますように。

糠漬け作りの副産物・干物

 魚の糠漬けを作る際、下ごしらえとして魚に塩をまぶして重石を数日間〜1週間ほどのせておくわけですが…。その魚からけっこうな量の水分がにじみ出てくるのです。(発酵して、ちょっとナンプラーを思わせるような匂いになっています。)

 これは魚の身が保持する水分そのもので、強いうま味があります。捨ててしまうのはもったいないです。魚の塩漬け汁を干物作りへと転用します。
 日本酒とみりんを足して、塩気を調整してから、干物にしたい魚を漬け込みます。好みの時間漬け込んだ後、半日〜1日ほど風通しの良い場所(軒下やベランダなど)で干すと自家製干物のできあがりです。

 写真はアジの干物。ひと晩、漬け込んだ後、昨日の朝から今朝まで干したものです。
5尾で350円なんて、メチャ安で特売されていたアジちゃんを干物にしてしまいました。干物にしておくと保存がききますから…。

 塩漬け汁で漬けて干した自家製干物は、市販の干物と違って、焼くと黄金色の香ばしい濃い焼き色がつきます。天日干し干物は機械乾燥と違い、骨まで軟らかくなります。頭もカリカリ食べることができます。

 長い時間漬けたり干したりすると、くさやの干物みたいな風味も付けることができます。でも、まあ、これは好き嫌いがあるでしょうけど…・。発酵して、プーンと匂い立つくらいの干物が好きです。こうなりゃ、干物も発酵食品ですよね。ただし、これは寒い時期じゃないとダメですよ。(まだ、秋で、寒気ではないです)。気温が高いと腐らせちゃうからね。

べったら漬け出来

 本日はパン教室です。よいお天気になりました。明け方前に、地震があったね。わりと大きく感じた。いよいよ来たか!と、思った…。お気をつけていらしてください。本日は久々にバターたっぷりのロールパンです。やっと、ふわふわのパン、パーンとしたものがやれます。

 で、写真はべったら漬けです。パン教室と、いったい、どーいう脈絡なのか、脈絡なんてどーでもいい。

 10日前の仕込みです。4%塩で下漬けした大根を甘酒+2%塩で漬け込み。スクリュー式のプレッシャー簡易漬物器で漬けました。が、プレス(重石)が強すぎて、つぶれはて、ぺったらこの漬物になってしまいました。
 べったら漬けというよりは、大根の熟れずしみたいになっちゃったよ。べったら漬けという名前をやめて「ぺったらこ漬け」という名前にします。

イカの塩辛

 明日、パン教室なんだから、明日のパンを載せてよ…というモンクもありましょう。めんご、めんご。ははははは。

 晶文社の発酵食本を書きながら写真を撮っている都合上、本日の撮影被写体は「イカの塩辛」になってしまった。めんご、めんご。ははははは。いやあー、ムシムシと暑い日でしたね〜。(話を横道にそらせて誤魔化す)。まあ、イカの塩辛もパンも似たようなものでしょー。(どこが似ているのか?)

 甘酒を使った保存食、イカの塩辛バージョンです。刺身用生イカ重量の4%〜10%の塩と、適量の麹(甘酒)で漬けこみます。3週間以上発酵させて発酵旨味を出したい場合は8〜10%くらいの高塩分で作ります。
 で、私の場合は、とーぜん、発酵のかもし味を出したいので、塩は多め。でも、発酵させると、その塩分作用がうま味に変わり、塩辛さは気にならなくなります。甘酒は発酵促進のため。甘酒の用意がない場合は熱燗の日本酒(もしくは焼酎)に米麹(市販品)を混ぜて数時間置いておき、柔らかく戻してから使ってください。もちろん、塩だけでも作れます。塩は粟国の塩がベスト。うま味が全く違う。

 必ず、刺身用のイカを使ってください。皮の色が濃く、エンペラ(耳)の端が透き通っているものが鮮度いいのです。イカの塩辛はワタ(肝臓)の質が味の決め手。ワタが小さかったり、鮮度が落ちていると、生臭いものになる場合があるので注意。

 胴から、ワタとゲソ(足)を抜きとったら、胴体(縦割りに切るといいでしょう)、ゲソ、ワタに分けます。(それ以外の軟骨や内臓やすみ袋は取り除きます。)分量の塩をまぶして盆笊に広げ、ラップをかぶせず冷蔵庫に一晩(半日)入れておきます。これはイカの水っぽい水分を飛ばして、塩なじみを良くするため。盆笊の下に皿を置いて、にじみ出てくる水分受けにしてね。

 翌日、ゲソは麺棒でバンバン叩いて柔らかくして3cmに切る、胴体も3cmくらいの短冊に切る、ワタは皮から中身をしごき出し、全部をぐちゃぐちゃと混ぜて、甘酒(麹)をイカ1杯につき大匙1ほどを加え、ついでに赤トウガラシの輪切りも適当に混ぜ加えます。
 これを清潔な空きビンに詰めて、最低でも3週間ほど発酵させます。低塩のものは3週間も持たないので、早めにどうぞ。

 途中、発酵するまで何度か全体をかき混ぜて、味なじみを良くします。3週間以上たつと発酵して、やけにメチャうまくなります。

 イカの肝臓には自己消化酵素があり、発酵促進させて旨味出しの働きをします。自己消化酵素とは、死んだ魚介類が身溶けしていくための酵素です。魚のお腹の中(内臓)にもあります。魚介類に分解酵素がなかったら、海も川も魚の死体が累々と積もってしまって、海でも川でもなくなっちゃいますよね。死した動物や人間の肉体が、死後硬直がとけたあとに柔らかくなるのも、分解酵素の働きです。(肉の熟成旨味も、自己消化酵素の働きを利用したものです。)

 生きる肉体は、いずれは死を迎えます。死すれば肉は緩み、そして溶ける。死という現象は無に還るための昇華なんですねえええ〜。

 イカの塩辛で哲学してはあきまへんでえ。

 よーく発酵したイカの塩辛やイワシの切り込みをキムチ仕込みの中に少し入れると美味しいよ。

甘酒を使った発酵食「切り込み」

 久々にカラリと晴れ渡った秋空です。

 仕込んでから3週間目の「イワシの切り込み(塩辛)」です。本当はニシンで作ると最高なのですが、東京では良いニシンが手に入らずに、イワシで代用しました。ご飯のお供、酒の友。しょっぱいけれど、旨味が強いので食が進みます。いうなれば、日本のアンチョビーみたいなものです。

 刺身用のイワシを3枚におろして、立て塩で水さらし。水気を切って、小口切りにして、甘酒と塩、赤トウガラシの輪切りで和えて、空きビンに詰めて3週間置きます。
 甘酒(米麹)が、発酵を促進してくれるので、3週間目くらいから食べ始めることのできる切り込みです。塩分は10%くらいにするといいでしょう。長く保存したいときは15%くらいがいいかな。長く置くほどに発酵が進み、うまみが増します。半年以上、できれば1年以上たったものがメチャ美味しいです。でも、その前に、いつも全部食べちゃうけどね…。冬に作る時は、市販されている数の子も入れると、味と歯ごたえのアクセントになります。
 甘酒の用意がない場合は熱燗日本酒に麹を入れて放っておくと、麹が軟らかく戻りますので、それを加えます。本当は塩漬けだけでもいいのですが、塩だけですと塩辛くなりますし、その分(塩慣れさせてうま味を出す時間)発酵期間が長くかかります。
 ナンプラーもイワシで作ります。丸ごとのイワシ2〜3に対して塩を1で配合します。重石をのせて数か月から1年間ほど常温に置いて発酵させます。発酵と同時に魚は好気性バクテリアや自己消化酵素で身を溶かし、液体化し始めます。それをろ過したのがナンプラー、つまり魚醤です。

 切り込み作りもアンテョビ作りもナンプラー作りも、基本的には魚の塩漬けなので、作り方は似たようなものです。魚の塩漬けをコメの糠やご飯に漬け込んで発酵させたものが熟れずしです。

 北海道から新米が送られてきて、やっと新米の初物にもありつきました。温暖化のせいで、北国の米も美味しくなったねえー。ますますご飯が進みます。

(無題)

 本日も薄墨色の空。長袖出したり、毛布を増やしたり。いつのまにか彼岸花も散っていました。

 こんな日は、まじめにパソコンに張り付いて原稿書きです。光不足で写真も撮れないし。
 夕べは何年かぶりにテレビというものを見た。(私、機械オンチなのか、それとも、ただのアホなのか、テレビのスイッチの入れ方知らないんです。テレビつけようとしたら、エアコンがはいったり、ビデオの引き出しが出てきたりして、よく娘に叱られたものです。この前は、どうしてもソウルフラワーユニオンの歌を聴きたくて、CDの機械のイボッコロをあちゃこちゃ押しまくっていたら、突然中川たかしが歌い出したんで、とてもうれしかったです。でも、どうやってスイッチ入れたのかを忘れてしまったので、そのあとはもう二度と聴けなくなりました。)
 テレビでは、志村けんのバカ殿様と、タモリの世にも不思議な話をやっていた。懐かしかったなあ〜。あの人たち、まだ、あの番組をやっていたんだねえー。すごい長寿番組だなあ。面白かったなあー。でも、志村けんも、タモリも、年取ったな。いやはや、年取るのは自分だけじゃなくて安心したよ。(生きるための安心材料がいかに乏しいことか。我ながら情けないね)。

 あーあ。さて、まじめに原稿書きでもやるべえか。パソコンのスイッチだけは、つけられるんだ。

風もないのに風仕事

秋風を感じたとたん、気も早く風仕事。まだまだ、早すぎるつーの。でも、でも、我慢できないんだもんねー。

 庭に縦割りにした大根と薄切りにしたお餅を干した。だめだめ、まだ雨上がりで湿度たかいでしょー。と、思って、わかっちゃいるんだけどね、やめられないんだな、これが…。ビューキですよね。

 野菜の糠味噌漬けに飽きた。もう糠床は店じまいしたいわ。今、かぼちゃを蒸しているのよ。糠床とかぼちゃを混ぜ合わせて「カボチャ漬け」の床にして、軽く干した大根を漬け込みたいわけよ。要するに、過酷だった夏にさっさとオサラバした気分に浸りたいだけなのです。
 カボチャ漬け。たくあんの前に食べるシャキシャキ歯ごたえの良い甘口の浅漬け沢庵みたいな漬け物。秋の味覚。秋、秋、秋なんですっ!
 普通は沢庵床で作るんですけどね。私の場合は夏の糠床からの転用で作ります。これが美味しいんですよ〜。大好きな漬物です。すぐに漬かるしね。糠床やっている人、物の試しに作ってみなはれ。後日、作り方と写真のせます。蒸したカボチャを糠床にまぜるだけでいいんです。

 写真は意味もなく、干したいちじく。生乾きだ。でも、これをパン生地にまぜてみようという魂胆。

へしこ(魚の糠漬け)

 試食が先行して、今年も撮影が後回しになっちゃいました。(鮭のいずしに至っては、写真を1枚も撮影しないうちに、全部食べちゃった…。)写真右が焼いたもの、左が生を薄切りにしたものです。

 残り1尾のサンマの糠漬けを本日やっとデジカメにおさめました。でも、魚の糠漬けづくりはこれからが本番です。旬で安くなたサンマや鮭をたくさん買い込んで、今回は「へしこ」も「いずし」かなり多めに仕込んでおきました。

 サンマの糠漬けを生まれて初めて生で食べてみました。う、うまい!なぜ、今まで生で食べなかったのだろうかと思うほど美味しいのです。(いずしのほうは当然、生で食べるのですが)。米糠の乳酸発酵でしょうか。さわやかな酸味がありました。焼いて食べると気付かなかったのですが、乳酸発酵による旨味が強いのです。乳酸菌が腐敗や雑菌の繁殖を抑え、発酵に導いて旨味を発生させているんでしょうね。まさしく米の乳酸発酵を利用する「なれずし」です。酢で〆たものなどとは比べモノにならないほどコクのある自然発酵的な酸味=旨味です。塩漬け数日間、糠漬け最低でも3週間以上と、時間はかかるのですが、作る価値あり!ですよ。

 一応、レシピでは数字を書きますが、本来、全然計量なんかせず、ほとんどカンで作るんですよ。サンマ1尾に対し、塩をティースプーンで山盛り1くらいの感じ。どんと重石をのせて数日放っておく。(すでにこの段階でプーンと発酵臭がしてくる)。水気を切って、適当に塩とトウガラシと焼酎を混ぜた糠に漬けこんで、また重しをドーンと載せておけば出来上がり。
 春や秋くらいの温度以下なら=20度〜23度ほどの日中気温(夜間はもっと下がる)なら、常温放置でも大丈夫です。それ以上温度が高い場合は冷蔵庫のほうがいいでしょう。
 東京は昨日、今日と発酵食仕込みには嬉しい温度になりましたが、いま一つ、安心できないお天気ですね。晴れたら温度はまだ上がります。常温放置は来月の11月から行います。今のところは、冷蔵庫です。