昨日、日が暮れて暗くなってからのことなんですけどね。
ジージージーって鳴く「蝉の声」が、庭の木から聞こえてきたのよ。
幻聴とか気のせいではないわよ。
私より先に、試食担当部長が気づいて、「あ、蝉が鳴いている!」と言ったんですもの。
まさか。夜でしょ。まだ四月でしょ。蝉の声が聞こえるわけないじゃん。とか思って、台所から奥に行って庭に面した窓辺によれば…。
ジージージー♪と、確かに聞こえてくるのよ。草藪の虫の声ではないわ。明らかに木にとまって鳴いている。傍に行くと人の気配を感じてか、ぴたっと鳴き声をとめる。静かに離れると、また鳴き始めるの。
蝉とそっくりの鳴き方だったわ。でも、体が小さそうな声量だった。アブラゼミとかミンミンゼミのように大きな体の蝉の声ではなかったわ。
部長いわく「これって、春ゼミなのかな?」。
春蝉という言葉を初めて聞いたわ。知らなかった。パソコンで「春蝉」を検索してみたわよ。
4月頃から出てくる小型の蝉。マツ林や、ブナ林、またはその近辺に生息する。
と、まあ、こんな感じで「4月」「小型」までは当てはまったけれど、近辺にはマツ林やブナ林などはないわ。その上、日照時間にしか鳴かないとも書いてあった。
夜暗くなってから鳴く蝉なんか、聞いたことも読んだこともないしね、確かに。ときたま、夜中に「ジッ!」と一発鳴きをする蝉はいるけど。
あれはいったい何だったのだろうか?蝉以外の羽虫の鳴き声とは到底思えない。
「異常気象による天変地異の前触れかしら!」と、私が嬉しそうな顔で言うと(→楽天的な天変地異愛好家)、部長はヤーな暗い顔になったわ。
丸山(私の住んでいる高台の名前よ)が噴火するとか。東元町(私が以前住んでいた番地よ)から石油がわきだし油田になるとか。駅ビルの地下から温泉が湧き出て、駅ビル全部が温泉浴場街になるとか。国分寺市だけが天空に浮上し、ラピュタになるとか。
ともかく、あれは蝉の声だった。春蝉か否かは分からないけど。
夜鳴き蝉という名前にしておくわ。
新種よ。
まだ、世界で発見されていないものよ。うちの庭にだけ生息する未知の生物。
そのうち、学術誌で取り上げられて、有名になるかもしれないわ。
ねこたま粉で作ったパルミエ(和名・源氏パイ)を夜鳴き蝉の代わりに載せておくわ。夜に鳴かないけれど、ウマいわよ。
ときたま、夜になったら笑うけど。