パネットーネ

 本日は晴天なり。抜けるような青空。朝一番でパン焼き。

 パネットーネはドームという意味。まあ、意味はどーでもいいんだけどね。実は夕べのうちに焼きあげておこうと思っていた。そうすれば、朝一番でナイフでカットできて、切り口を撮影できるから…・。
 と、思っていたのだがー、疲れていて寝てしまった。朝5時まで。

 なななーんと、オーバーナイト12時間の二次発酵だよ。日中の一次発酵より時間が長い二次発酵…。それでも、リッチな配合なので、ちゃーんと私の目覚めを待っていてくれた。朝に追加で保温して、型100%までいかせてから焼きあげたら、ドピューンと窯伸び。よーし、いい子だ。

 配合はクグロフに似ています。でも、クグロフより少し水を多めにして、伸びがよくなるようにします。イタリアではコモ湖に生息する酵母菌を使って作るのが本格的なパネットーネだとか聞いたことがある。
 湖の向こう岸に教会があって、そこの鐘の音が湖の水面を渡ってこちら岸にも大きく響きわたる…とか。そーか、教会の鐘の音を毎日聞いている酵母菌かあーと思ったもんね。

 で、まあ、コモ湖も、鐘の音も、どーでもいいんだけどね。

 あの…・。バターが品薄で、なかなか入手しがたいんですよ。このパン、バターをたくさん使うんですけど…。一応、今週の教室で、季節がら、やろうと考えていたアイテムなんですが…。バターの量を少し減らして(誤魔化して?)作ろうか。

 牛乳の生産調整と、今年の猛暑で、原材料の牛乳不足がたたってバター不足。業務用無塩バター、お1人様2ポンドまでしか買えないんだよなあ…・。困ったな。

 それに比べると、エジプトのパンはエライ。粉と塩と水だけでいいもんなあ。あ、ちまみに、アイシの空洞は、オーブンの上火の強さで、生地上面が持ち上がるからできるんです。フライパンで作れますか、の返答は「焼けるけど、同じものにはなりません」です。

アエイーシでサンドイッチ

 水分100%のゆるーい生地のエジプトのパン・エイシは、水分が多いせいで、見た目ほどは硬くなく、むしろ、フワフワしっとりとした食べやすいパンです。
 エスニックな平パンは普通、老化が早くて、焼いたその日でなければ硬くなって食べにくくなるんですが、アエイーシは違います。翌日の方が、逆にしなーっと柔らかくなっているくらいなんです。古代エジプトパンはエライ!

 アエイーシの側面の皮をハサミでぐるっと切って、手で引き裂くと簡単に2枚になるのです。包丁を入れないので、クラストは凸凹凸凹…。この凸凹がいいんだな〜。

 サンドイッチにすると、中の具を凸凹がしっかりと固定してくれて、安定したサンドイッチになるんですよ。シンプルな具で薄く作っても、よくばりに具をどっさりと詰め込んでも、とても座りのよいサンドイッチになります。クラムが薄いのでとても食べやすい。

 古代エジプトの平パン…などと言うと、「硬くて酸っぱい」というイメージを持たれちゃうかもしれませんが、全く逆です。やわらかーくて、香ばしい。歯切れも良いのです。

 中種150g、小麦粉300g、塩小さじ2、水300cc(±10cc)をボウルに入れて、10分ほど、こねこね捏ね混ぜて、ドロドロ生地を一晩(12h)15度〜20度くらいの室温で寝かせて発酵させ、レードルで生地をすくって天板に落とし(必然的にダラーっと円の形に広がる)、30〜35度で1時間ほど二次発酵させて、高温(250度以上)で10分ほど焼くだけです。
 メチャ簡単と言えば簡単なのですが、普段のパン生地とは全く様相が違うので、作りなれないうちは戸惑ったり、失敗したりするかもしれません。そのうち、教室でやるべえーか?

エジプトのパン

 エジプトのパン、アエイーシです。

 発酵パンの原初的なもの、パンの原型とも言われています。いうなれば、「パン」のご先祖様が、今もってもエジプトで現役で活躍していらっしゃるわけですな。6000年も、長年お勤め御苦労さまでございます。

 小麦粉と水を同量で捏ねるので、捏ねるというよりは「練る」生地作りです。水分が多い(100%)せいで、発酵が早いです。イングリッシュマフィンも多いけれど、それでも80%です。普通のパンは70%くらいですね。

 アエイーシのちょー緩い生地(デロンデロンだあ〜)を天板に落とすと、必然的に平パン状に広がります。
 焼くと、ピタのように、中に空洞ができます。空洞に料理を詰めていただきます。デロンデロン生地は、まともに手では触れません。全粒粉をまぶしてから触れないと、ほとんどゴキブリホイホイ状態です。

 アラビア語で「ハミーラ」がパン種、「ハムル」が酒の意味というのは昨日書きましたね。
 では、発酵とは?これは「ケビーラ」と言います。ケビーラには「膨らむ」という意味もあるそうです。
(エジプトのアラビア語は、正則アラビア語とは異なって、エジプト方言=アンメイヤと呼ばれているそうです。ここいらが紛らわしいんやでえ。知人を介してエジプト人に聞いてもらった。わし、なんで、ここまでやるんやろな、アホちゃうか)。

 10年も前の話になるのですが、アメリカの研究機関から「古代エジプト小麦・カムット」というものを取り寄せて、パンの自然発酵の実験をしたことがあります。
 この小麦はパン種なんか入れなくても、あたたかいところに置くと数時間で発酵してパン生地状態に膨れてしまうのです。

 つまり、ケビーラしちゃいますねんえ。ハミーラがいらん。パンがそのままハミーラになっちゃうんだもん。

 で、この古代小麦のカムットさんは、エジプトのピラミッドの中からアメリカ人(ん、たぶん、アメリカ人だったはず)が、発掘して、研究機関で発芽させたものなんだけど、カムットの言葉の意味がずーっと今まで分らなかったわけよ。つくばの農水省の小麦研究所から、有名大学の穀物研究の学者さんにまで問い合わせた。でも、日本人、みーんな、分らんみたいだったのよ。えらい人でも、わからんみたいやった。

 で、今回、やっと謎が解けたのです!(見知らぬエジプト人のオバチャンのおかげです)小麦のことをアラビア語で「カムッフ」と言うんですって。…。もしや、アメリカ人の発掘者は「カムッフ」(=コムギ)をカムットという発音に聞き間違えて、発掘した小麦の名前(固有名詞)にしたんじゃないのかなあ?
 もし、そうだったら…。コムギに「小麦」という名前をつけたことになる。いうなれば、犬に「いぬ」という名前をつけるような話じゃ。ははははは!

 まあ、どーでもいいか…。自分の本書きの原稿ネタだから。

 ちなみに、カムッフは、エジプト方言では「アムハ」という発音になるそうです。小麦粉は「ダカーキ」です。

 ということで、本日はアラビア語講座でございました。とても役立つブログですね!ぜんぜん、実用的じゃなくて。…・。
(アエイーシ、メチャ美味しいですよ。みなさんも、作ってみてください。中種50%で、オーバーナイト12時間でイケちゃいます)。

ドングリから赤ちゃんが生まれた・続編その2

 昨日、見つけたドングリの赤ちゃんに、兄弟(姉妹?)がいたことをさらに発見しました!双子です。その上、お母さんらしきドングリも見つけました!双子の赤ちゃんの下あたりにいて、間抜けた顔でヘラヘラ笑っている優しい顔のドングリさん。たぶん、これが、ドングリムシのお母さんに違いありません。

 関係ない話だけれど。今書いているパン本のために調べていたことが、やっとエジプトからメール入った。何を調べていたかって…そりゃーあなた、ははははは!
 パン種のことを「ハミーラ」、そして、酒のことを同属の言葉で「ハムル」というのだそうです。エジプトにはパン作りだけではなく、同時に酒(ビール、ワイン)の醸造法もメソポタミアから伝播したのです。発酵種が同属だからね。言語でもつながっているようですな。まあ、言語というよりは、コンセプトか。

 本日は、これから「アエイーシ」というエジプトのパンを作成します。これは、パンの原型、今現在も普通にたべられている原初的な古代スタイルのパンです。
 粉の量より水分が多い生地で、パン生地が水種みたいなやつ。とんでもないパン生地です。どろどろなんだから。発酵させて焼くと、ぷくっと風船みたいに膨れて、中に空洞ができるんです。その空洞に料理やソースを詰めて食べるパンです。
 エジプトでは、10個で30円にも満たないような値段で路上で売られている。(わたしゃ、エジプトではパン屋をやりたくないね)。あんなに水分が多ければ、パン種なんか入れなくても自分で勝手に発酵してしまう。

 明日あたりに写真撮れるかな。

 本の原稿書きも、いよいよ終盤戦。一段落ついたら、国分寺跡の林の中をほっつき歩きたいです。周りの農家の冬野菜も美味しくなっているはずです。あと、少し、パソコンに張り付け…。

ドングリから赤ちゃんが生まれた

 国分寺農業祭のとき、林の中から拾ってきたドングリ。丸々と太った芋虫みたいな赤ちゃんが生まれてきました。めでたしめでたし。
 手前の布がドングリ染めです。絞り模様入り。ドングリの左下あたり、小さな白っぽい豆っころみたいなのが、ドングリの赤ちゃんです。ドングリの赤ちゃんは大きくなったら何になるのかなあ?もにょもにょと動いています。
 yuukoさん、見えますか?染めの色、パソコンでちゃんと出ているかなあ。比較的、アーバン系の色です。芽が出ていたドングリは庭に植えました。ドングリの花、咲くかな。ドングリも、虫になって空を飛んだり、草木染めのハンカチになったりで、けっこう忙しいんだな。

 昨日のお教室のスーパーキング捏ね、思いのほか生徒たちは苦戦していたようです。

 まず、めちゃくちゃ吸水が高いので、必然的に水分の投入が多いのね。で、最初の粉切れの感覚からすでに違うわけよ。吸水が高くてグルテンが高い粉って、最初の粉切れにも、ポイントがあるのです。
 粉切れさせているうちにも早々とグルが組成されちゃうんだけれど、できちゃったグルテンって、もうそれ以上本質的な意味での吸水をしないんです。しかし、粉切れさせきっていないので、でも、まだ、水気は残っているわけ。
 このもてあまされた水分が生地をでろんでろんにべたつかせるのです。いうなれば、生地が水浸しになっている状態。ガンガン吸水させて、できたいだけグルテンを出させてあげて、パン生地らしい弾力に持ち込まなければいけないんだけれど、そこに行きつけないうちにべたつきそのものを手が持て余してしまう。早い話、小麦粉の性質そのものを手の感覚が認知していないのです。粉切れ生地を触った瞬間に相手(小麦粉)の性質を直感しなきゃあきまへん。
 小麦粉はいろいろなものを使ってみるといいでしょう。みな、それぞれ、個性があるからねえ。そして、それぞれのパンが出来上がる。

本実はお教室でございます

  気温は低いのですが、11月らしい寒さで、これでいいのだ〜。本日はお教室でございます。お気をつけていらしてください。

 本日のアイテムは何の変哲もない、フツーの山形食パンです。前回はプルマンブレッドで、やはり何の変哲もない四角い食パンでした。しかし、この二つは似て非なる気泡を求めるので、ビミューながらもビミューではなく違うのです。どーでもいいのだあーという気持ちと、どーでもよくないよーという気持ちの葛藤でございます。造反有理。

 ふだんは使わない最強力粉を使って、ドピューンと窯のびする気泡を目指してみましょう。だから、何なのだ?何でもないのだ。何でもなくても、それでいいのだ。

 まるで、ゴムまりを捏ねているかのような手触りの粉。グルの高い粉は驚くほど吸水が高いです。たぶん、かなり硬質の麦ですね。二粒系コムギに似た手触りの粉。まあ、たまには粉頼りの捏ねも面白い。これでいいのだー。

 ずーっと原稿書きで、パソコンのある大奥のお部屋が、ゴミ屋敷のように、ぶっ散らかっております。本が、ダダダーッと崩れ落ちていたりして、爆撃直下のような惨状です。(本書きの間は部屋を整理整頓しない悪癖があるのよ、私…・)。みなさま、お気をつけて足を踏み入れてください。ゴミにつまずいて、お怪我などなさいませんように。

報告その2・クロワッサンの二次発酵の延長に関して

 本日、二度目の画面です。

 クロワッサンのながーくて、かったるーい二次発酵時間をオーバーナイトでさらに時間延長し、「放ったらかしの寝ながらの二次発酵で、ぐうたらとラクできないものであろうか」という実験結果に関してです。

 いやはや、実にアカデミックな命題ですなあ〜。いかにラクするか、である。

 ご報告いたします。しょぼーん。結論から申し上げると、ラクできません、この季節の20度以下の低温では。時間がいくら長くても、低温下ではクロワッサンの生地は十分な発酵をせずに、中がもっちりしてしまいます。オーバーナイトの後、追加で30度保温を2時間半行ってから焼成してみました。でも、やはりまだ、発酵不足。クラムの軽さに不満足です。
 この際、いつもどおりに5時間保温の二次発酵。それで、やっと満足できる焼き上がりを得ました。

 ということはですね、オーバーナイトの12時間は、ほとんど無意味だったということです。成形を完成させたその日でも、5・6時間ほどの保温の二次発酵が必要になるんもです。ですから、翌日に焼成を引き伸ばしても、低温期なら発酵の意味合いがほとんど無くて、やはり二次発酵のホイロ時間が長い時間必要という結論です。

 でも、無理にその日のうちに焼き上げなくても、寒い季節なら成形状態で一晩放っておけるという結論は得ました。まあ、これだけでも、十分ラクですよ。無理しなくていいんですから。
 たぶん、20度以上の温かい季節なら、オーバーナイトだけでも発酵するんじゃないかなあ。これも、実際にやってみないとわからないけどね。

イングリッシュブレッド=山形食パン

 最強力粉のスーパーキングを50%ブレンドして、山形食パンのすだちを良くしようと思ったのだがあ…・。

 やはり、今回もプルマンブレッドみたいなきめ細かい生地にしてしまったようです。パンチやガス抜きを執拗にやって、濃い味にしたパンが好きなので、どうしても淡白にできないんだよなあ…。生徒にもパンチ入れやガス抜きを執拗に勧めてしまうし。

 中種法はストレート法と違い、きめ細かいフワフワ生地になるのです。だから、中種を減らして、さらに、その中種を水分を多くして水種に近いものにすれば、ストレートっぽい生地になって、素直に窯のびするんだけどね。いつもどおり、50%でやってしまった。

 種量を30%くらいに減らし、ふだんより少し高めの温度で発酵かけると、もっと生地のきめは縦に伸びるのです。
 が、スーパーキングの窯伸び力を過信してしまった。種を操作しなくても、あの「馬鹿の一つ覚えのように窯伸びしか能がない粉」なら、まっすぐ上に伸びてくれると思ってしまったのだよ。

 しかし、アホのように天に向かって突っ走る気泡にはならず、フワフワ生地になっちゃった…。スーパーキングも小麦粉だったのねえ。

(無題)

本日も楽園のような晴天でございます。温かい…。街のクリスマスイルミネーションがそぐわない。

 今朝は初めて聞く鳥の声(らしきもの)で、驚いて目が覚めました。なんだったのだろうか、あれは…。他の鳥よりヘルツの高い音。
 まるでゼンマイ仕掛けみたいな機械的連続音でカカカカカカカカッカ。キツツキの大工仕事のようなのどかな音ではない。でも、機械でも電気ドリルでもなく、明らかに何かの鳥の声だ。まるでゼンマイ仕掛けのオモチャのドリルみたい。で、名づけて「ゼンマイドリル鳥」。(勝手に名付けるな)。
 勝手に名付けた小鳥に「チチゲ鳥」というのもいて、こいつは春夏にはチチゲチチゲと乳毛鳴きを発し、秋になるとピイピイと澄んだ甲高い音の可愛い鳴き方をする。ヒヨドリの連中も今、うるさい。オナガの威嚇に似たギャーギャー鳴きをする。たぶん、冬入り前で、餌の強奪戦にやっきになっているのだろう。天然目覚まし時計。

 ゼンマイドリルに起こされたので、朝からパン捏ねだ。イングリッシュブレッドを仕込んでみた。上にすくっとすだった直に窯伸びした気泡を出したい。何の変哲もない山形食パンだけど、思い通りの気泡を立たせるのは意外に難しいのです。
 ここのところ、なかなかうまく伸ばせない。やむなく、奥の手で、スーパーキングを買ってきて50%ブレンド。この粉は、馬鹿の一つ覚えのように上に上にと窯伸びすることだけが取り柄の淡白な味の粉。正直言って、味気ない。他の味の濃い粉と混ぜて使うといいのです。
 なんで気泡を伸ばしたいかと言うと、そのうちパネットーネを教室でやりたいから。イングリッシュブレッドみたいに窯伸びする生地作りを手なづけておかないとね。うまく焼き上がったら、写真撮るもんね。

 ということで、今週のお教室のパンは「馬鹿の一つ覚えの窯伸びしか能がないスーパーキングをブレンドしたイングリッシュブレッド」です。
 そして、うまく気泡が伸ばせたら、そのあとはパネットーネです。

本日も晴天なり

  今日も良いお天気になりそうな一日です。晴れると、やっぱり嬉しいよね。一日、マジメにアスペクトのパン本の原稿書きする予定。

 只今、クライマックスの部分。メソポタミアで発生したパン作りが、古代エジプトに渡って「発酵パン」となる場面です。

 紀元前3000年もの大昔。小麦粉と水を混ぜ合わせて捏ねて放っておいたパン生地が自然発酵して、焼くとふわっと膨らみました。そのパンは、それまでの無発酵パンとは違い、風味もよく食べやすいものでした。発酵パンは古代エジプト人たちを魅了し、それは彼らの大好物の日常食となりました。パン好きとパン焼きに起因して、彼らは他民族から「パン食い人」などと呼ばれました。

 ということで、紀元前の古代エジプトが「発酵パン」の発生地です。なにも加えずに小麦粉と水だけで自然発酵させるパンは、うちのパン種と同じ原理です。ただし、私は初期的自然発酵では酸味もあるし発酵力も安定していないし、十分な柔軟性が生じないと思うので、長期間かけてリフレッシュメントを繰り返し、古代中国の老麺法と同原理に持ち込んで熟成させているだけです。

 でも、もともとの我が「元祖・自然発酵パン種」は、実は古代エジプトなんですよ。発酵パン作りに長けていた古代エジプト人が、そうこう酸っぱくて硬い発酵パンばかり作っていたとは考えられないね。誰がしかは「パン種」状態のリフレッシュメント種を考案していたと思うよ。それを証拠に聖書の「出エジプト記」には、(携帯可能な)パン種の表記が何度も出てくる。

 イスラエル人が、モーゼに率いられてエジプトを出るとき、せかされたせいで、パン種を持ち出すことができずに、パン種を入れずに捏ねた生地だけを持ち出しだ。それを記念する過ぎ越しの祭り(パスオーバー、ヘブライ語ではペサハ)ではパン種を入れない無発酵パンのマッツアを(その期間中)食べるわけです。

 出エジプト記に「パン種」が明記されているということは、やはり古代エジプト人のパン種は初期発酵の酸っぱくて硬い自然発酵パンなのではなく、種継ぎした熟成パン種を使って、美味しいパンを食べていたのは確かだと思います。そのパン種は、うちのパン種とほとんど同じものだったと思っています。

 「小麦、パン種、発酵パン」の視点から、古代文明の考古学や聖書をひも解くと、すごく面白いんだよ。小麦は世界最古の人類の穀物だからね。一粒の麦が時空を超えて世界中に広まった。その一粒の小麦がパンになって人間の糧となった。それと同じものを自分の手で作っている。紀元前9000年。シュメール人の播いた種が、すべての起源か…と考えると、パンと言えども稀有壮大な宇宙が広がる。(と、こんなことばかりを考えながらやっているもんだから、パン教室に生徒が全然集まらない)。

 話を古代の起源説から現実に戻しましょう。何度も申し上げますが、シュトレーン、焼きたてをすぐに食っちゃあきまへんてばあー。せめて1週間くらいは寝かせてくださいよ〜。三日前に焼いたの食っていいか?なんて…もう少し待ちんしゃいよ〜。こちとら、紀元前6500年なんて、かなり前のパンのこと考えているんだから、もー。
 1週間くらい、どうってことないじゃん。2週間だって屁みたいなもんじゃわい。なにせ、元はと言えば、うちのパン種原理ははるか大昔の古代エジプトなんだからね。

 シュトレーンのあのふくよかな形は初着に包まれたイエス様の寝姿という説もあります。どうぞ、すこやかな眠りを!お与えくださいませ。
 ちなみに、イエス様が生誕された「ベツレヘム」は、「パンの家」という意味です。