歌うパン

 30%の種配合、12時間のオーバーナイト(常温一次発酵)で、朝、一番で焼きあげたパン。

 オーブンから出したとたん、朝の光の中で、歌い始めました。

 パチパチ音を立てながら、焼き皮が弾けて、表面に亀裂を走らせます。

 この音を「パンが歌う」と表現します。最高の状態で焼き上がったときにしか、パンは歌いません。

 種、時間、温度、湿度、捏ね、タイミング、成形…。ありとあらゆるパン作りの条件が、すべて最高で適正なときだけ、パンは歌います。

 パンの歌を聞いた朝は、気分も最高です。調子に乗って、ドーナツの生地、パンペイザンの生地、くるみ&いちじくのライ麦パンの生地、3種類も仕込んじゃった。

 市販のパン、ずいぶん値上がりしているらしいですね。出来合いのものは滅多に買わないので、私自身は、ピンと来ないけどね。

 原材料の値上げていどなら、さほど打撃は感じないです。でも、消費者の末端価格は、価格上昇が上乗せに次ぐ上乗せで、ずいぶんな上がり値の価格になってしまうんでしょうね。

 原油はこの後も、まだまだ上がります。(というタレコミ情報が、すでに入っている)。食べ物の価格は上がり続けることがあっても、もはや、下がることはないでしょう。気の毒な限りです。

 こうなりゃ、最低限度の素材から、何でも簡単に作りだせるヤツの勝ちだよなあ。

 世界的に、食糧危機の時代が、加速度を増しながら、ばく進している。

 パンも、うどんも、麹も、味噌も、醤油も、漬けものも、なんでもかんでも、素材から作り出せる生徒になってくださいね。うちの教室に来た以上は、パンだけでは済まないのですぞ…。

 コメ、ムギ、マメの三大穀物さえあれば、食生活土台の基礎食品のほとんどが、自分で作り出せてしまうのですから。

 お金を払って出来合いのものを買うという生活から、作れるものは何でも作るという暮らしに転じることが、私たちのやっていることの意義です。

 そして、畑や田んぼや、野や山や川や海や森を大事にしよう。地方を大事にしよう。

 そこからしか、根源的ないのちの食べ物が生まれ育たないのです。