自家製和風アンチョビ

 立春を迎えると、シコイワシが手に入る季節の到来です。

 カタクチイワシとも、セグロイワシとも呼ばれる指ほどのサイズの小さなイワシです。(つまり、金魚みたいなサイズだな)。

 店頭にシコイワシが並ぶと、廉価なこともあり、何パックも購入してしまいます。たいがいは好物のメザシづくりのためなんですがね。

 でも、「生食可」の新鮮なものが入手できたら、もー、これはお宝ですよ!(ああ、新鮮な魚が手に入る地域がうらやましい。ここは東京・国分寺。海のそばではありません。でも、国分寺は野菜がうまいし、湧水もあるし)。

 即、ゲット!

 文句なく、アンチョビーを作ります!

 アンチョビは普通、かなりの高塩分(20%くらい)で塩漬けして仕込むのですが、私は郷里の北海道「切り込み」づくりのパクリで、麹も少々隠し味(かくし調味料)として使うので、さほどしょっぱくはしません。10%〜15%くらいの塩分です。

 麹を隠し味に潜ませると、甘味も出るし、発酵を促進するので、腐敗等の危険も軽減できます。麹をたくさん入れては甘くなってしまうので、ほんの少しですけどね。まあ、安心材料として…です。
(麹を入れない場合は、食中毒防止のため、20%くらいの高塩分にしてください)。

 三枚に下ろしたシコイワシを塩漬けして、空気を遮断する状態で容器に詰めて、冷蔵庫で半年〜1年ほど寝かせます。

 途中、上の方が酸化していないか、チェックしてください。酸化とは、上に浮いた魚の油脂が空気に触れて黄色くネバネバになっている状態を言います。もし、酸化していたら、その部分だけを除去します。(酸化した魚の油脂は消化不良を招きます)。

 そのためにも、漬け込む容器は中が見える透明なものがいいですね。ジャムの空きビンなど。

 正常に発酵が進むと、写真のように赤茶色くなっていきます。美味しくなったころに、酸化防止の意味で油を注ぎ入れるのですが、オリーブオイルでは固まってしまうので、半々くらいにサラダオイル(ひまわり油や菜種油など)をブレンドしたものを使います。
 油っぽいものは、キツイものがあるので、私は表面に油が浮く程度、少しだけです。イタリアのアンチョビは、まさしく油漬けですが、本当は(もう年なので)ちょっと、きついです。(要するに、自分の好みに合うように、テメー勝手に作っているわけよ)。

 ともかく、冷蔵庫の中で、(酸化にだけは注意を払いながら)長ーい期間、放っておけばいいだけなのです。でも、どーしても、表面をちょっと酸化させちゃうのよねえ。で、そのころに、酸化した部分だけを取り除き、油を入れます。それは3ヶ月目であったり、半年後であったり、1年後だったり。かなり、いい加減だ。

 写真のアンチョビは何年前のものか忘れるくらい前のもの。たぶん、2年以上前。昨年のものは、まだラベルがはがれていないので、1年前のものだと判別つきますもの。

 ほとんど、とろとろの液体状になった年代物のアンチョビ。これを食べられる我が家のお客は稀少ですね。(心中、陰で、私の大切な貴賓客と呼んでいる。でも、この家に来て、貴賓も何もあったものじゃないがね)。年代物は、手はかからないんだが、時間を要する。これは、これって、貴重なことですうう〜。

 めちゃ、美味しいんですよ。このアンチョビが。うますぎる。そのまま食べてもいいけれど、ほんの少し調味料としても使えるんですうううう〜。

 にじみ出た液体は「アンチョビソース」として使えます。(写真・右)。そんじょそこらのアンチョビソースなんかより、百倍うまいよ。旨味成分が強いので、隠し味として少しだけ調味料として使います。

 出来上がりの先は長いけど、新鮮なシコイワシが、もし入手できたら、自家製アンチョビを作ってみませんか?

 今年、私はゲットできるかなあ…。毎年、一ビンくらいは仕込めるんだけどね。

 運かな。