カビたパンから溜まり醤油を作る

 写真・右手に見えますのは、コウジカビの生えた自然発酵種の酵母パンでございます。写真・左手に見えますのは、我が家の自家製たまり醤油でございます。

 このふたつは、とても仲の良い関係なのでございます。

「カビだらけのパンと醤油が、なんで仲の良い関係なのよ?」と言いたくなるでしょ。

パンに生えたコウジカビを蒸した大豆に増殖させて、塩水で漬けこんで発酵させたもの(=豆味噌=溜まり味噌)を絞って取ったものが、我が家のたまり醤油。
この醤油はとても旨味が強く、冷奴や刺身などに添えていただくと至福の味わいなのでございます。

 本日はイカの沖漬を作りました。1パイ150円の刺身用イカを溜まり醤油に漬け込む「づけ」です。イカソーメン風に細切りにした身もさることながら、漬け込んだ肝(キモ)がまるでウニのような味わいで最高に美味しいのです。肝臓のづけは、とろーんととろけるような濃厚な味わい。これを作るには、最高の味のしょうゆを使わなければいけない。醤油はやはり、手作りの溜まり醤油に限る。

 パンは小麦粉と水だけを自然発酵させた種で作るパン。たまり醤油は麹カビを生やした大豆を塩水だけで漬け込み、10ヶ月間ほど発酵させたもの。

 小麦粉、塩、大豆だけが原材料。たったそれだけで、酵母パン、豆味噌、たまり醤油の三つの食べ物ができあがる。
 うちの味噌や醤油は、なななんと、もともとは自然発酵種のパンから生まれてきた調味料なのでございます。到底、まともな人間には思えないでしょうけれど、本当の話なのでございます。

 自分で言うのもなんですが、発酵道もここまで来ると、もはや「巨匠」の域でございましょう。かつて、市販の種麹菌ではうまく作れなかった醤油も、自分であみだした「酵母パンコウジカビ菌」を種麹菌に使うと、簡単に、うまく作れる。自然発酵の恵み、環境に生息する自然界の微生物群のお陰様です。
 ともかく、菌はタダです。どこにでもいて、誰にでも無料、平等、有用です。味噌や醤油に含まれる生きている菌を摂取すると、食欲不振など、どこなにぶっ飛んで行ってしまいました。