平パンの理由がこの歳になってやっと分かった

 昨日の我が家の暑さは半端じゃなかった。(暑すぎて頭に来るから意地でも冷房をつけなかった)。

 ただでさえも灼熱の戸外、そして、室温は34度。かてて加えてオーブンとグリルをつけたものだからたまったものじゃない。室温はいっきに38度まで上昇。火を消しても室温は下がらず。熱帯である。真夏のエジプト、パキスタン。(…よりも、もっとひどい。湿度まで高かったんだから)。

 そのような状況下で、パンを作った。無謀である。はなから二次発酵のホイロ状態と全く同じなのだから。まるで二次発酵のように(当たり前だが)一次発酵が進む。

 まあ、ここまでは大丈夫だった。

 問題はそのあと。生地温度が高くなりすぎていて、ヨーロッパスタイルの普通のパンの成形ができないのだ。生地が崩れてくる。すぐにズタボロ、生地切れを起こす。

 特にバターが配合されている生地など全滅だった。得意技のロールパンの成形なんぞは、麺棒すらかからずに、見る見る間に生地が溶け出す。

 熱帯の高温下で、まともに作れたのはエスニックな平パンだけだった。

 私は、その惨状の中で、はたと気付いたのだ。なぜ、中東の日常食パンがどれもこれも平パンスタイルなのか。
 平パンにしか、成形できないのだ。しかも、暑いとリッチ配合のふわふわパンなど美味しく感じない。薄皮の平パンに、野菜や肉をはさんで嚙り付くのが一番美味しく感じる。熱風の中東では平パンが必然かつオーディナルなのだろう。焼き上がりも数分しかかからない。いやはや、平パンは偉大なり。あれは生活の知恵と必然性から生まれたパンなのであろう。

 生徒のみなさーん。30度を超える気温の日のパン作りは、なるべく平パンにしておきましょう。間違ってもバターロールなんか作ってはいけません。30度過ぎたら、少しでも油脂を配合しているパン生地は、油脂溶解による生地の崩壊を起こします。もし、それでも作りたかったら、ベンチタイムを冷蔵庫の中で取り、生地温度を下げてから成形してください。