野生酵母の自然発酵種

  
 酵母パン教室 竜洞

 ライ麦パン作りは種継ぎが大事。種継ぎをしていない熟成種をたくさん入れすぎてしまっては生地が酸化して焼き色が悪くなり、ボリュームもでません。また、種の発酵が未熟でもphの下がりが充分ではなく団子状の失敗作になります。普通、ライ麦パン作りはサワー種(酸化させたphの低い)種を使用します。
 ところで、当教室の種(白い小麦粉で、発酵したパン生地と同じような形態)は長期間かけて自然発酵させたものです。自然発酵、つまり必然的にphが下がった状態なので、あえてサワー種を作る必要ありません。

 ライ麦のたんぱく質は小麦と違いグルテンを持ちません。グルテンを形成しないライ麦粉は水で捏ねると、ただべたべたしただけの生地になり、小麦グルテンのように気泡を抱え込む力を持ちません。また、、ライ麦は小麦よりペントザンが多い穀物です。ペントザン成分の過半は非水溶性で水と結合させると固くなる性質があります。

 このようなライ麦の特性からphの適正なパン種を使わないと焼成時に酵素活性のせいで離水を生じ、生地をべたべたの団子状にしてしまうのです。ライ麦パン作りの失敗の大半はこれが原因です。phを適正に維持管理している当教室の種は、ライ麦パン作りの際のもペントザンや酵素活性に的確に作用し、パン生地をしっとり弾力的に作り上げる性質を持っています。

 サワー種を起こして使っても、もちろんライ麦パン作りはできますが、サワー種のphの下がりはともすると大きすぎて、酸度の強すぎるものが出来上がることもあります。味や風味や質の安定に持ち込むには困難がつきまといます。また、ライ麦パンは酸っぱくて固くてクセが強ければよいというものでもありません。ライ麦配合が50%であろうが、100%であろうが、適度の弾力とボリューム、そして心地よい風味と食べやすさは必要だと思っています。

 このような理由から当教室ではライ麦パン作りにサワー種を作ることをやめ、通常の野生酵母の自然発酵種をパン作り全般に用いています。