柿酢


 りんこう庵の水屋暮らしは只今「麹屋」真っ最中。さまざまの米や大豆にコウジカビを生やしています。
 白米麹が出来上がったら、もち米や黒米で甘酒を仕込む。甘酒を放ったらかしておくと、ぷくぷくと発酵してきてどぶろくになっちゃう。これは我が家の生業のパン教室のせい。生活圏に生息する野生酵母どもが、甘酒の中にまで落下して住み着いて生活を始める。酵母が生活すると糖分は極当然の話ではあるがアルコール化して酒になっちゃうわけであーる。
 甘酒の蓋がドッピューンと吹き飛び、ビンの口から酒臭い甘酒がブーッ!と吹き上げドボドボドボ〜…。(汚い表現で恐縮ですが、わたしゃこれをどぶろくのゲロ吹きと呼んでいるのでございます)。このゲロ吹きがおさまると、ドブロクはまさしく「酒」になる。酒税法を遵守するなら、国税局を敬うなら、己が手で麹作りも甘酒作りも自然発酵種のパン作りもできないのです。でも、これをやらなきゃ教室できなくなっちゃって、わたしゃあ飢え死にか、ホームレスの身になるわけです。(今ですら、その一歩手前なんだから)。できちゃったどぶろく、なっちゃった日本酒。国税局の皆様、大変ごめんなさいでございます。すんませんねえ。
 気温が高いと、どぶろくや酒は乳酸発酵して酸っぱくなるのです。もし、酸味がついたら、今度はあえて酢にしてしまえばいいのです。ただし、そのままでは雑菌に犯される恐れがあるので、酢酸菌を種付けするわけです。
 ああ…前振りが長かった。酢にするための酢酸菌の種付けは今が旬の柿を利用します。柿を(皮をむかず)そのまま容器に入れて暖かい場所に穂位置しておくだけ。何日か経つと柿はジュクジュクに熟れて身溶けして、酒と酢を混ぜたような匂いの透明な汁を滲ませます。舐めるとメチャクチャ酸っぱい汁。これが柿酢です。この柿酢を少々(大量には使わない、酢酸菌の種として使うんですから)酒に混ぜ込んで、温かい場所に放置しておくと、酒は酢酸発酵して酢になります。円やかな味わいの手作り酢のできあがり。長期保存する場合は75度に低温加熱して菌を殺します。生酢として保存したい場合は残渣(モロミ)を清潔な布で漉してから冷蔵庫で保存します。ちゃんと酢になったか否かをチェックする方法はちょっと加熱してみて、ツンと鼻を刺すような酸臭があるかどうかで調べます。酢酸発酵(酢)は鼻を刺すような刺激的な匂いです。ツンとこなければ、まだ乳酸発酵程度でとどまっているのでしょう。
 米さえあれば、甘い甘酒ができる。甘酒は酒になる。酒は酢になる。米だけで三種類もの調味料ができちゃうんですよおおおおお〜。お米って、エライと思いません?!?わたしなんざあ、私以外のなにものにもなれずに困っているというのに。マア、酒を飲めばトラくらいにはなれるんだけどね。