「たくや」一ヶ月がやっと過ぎました


 すったもんだの開店から、やっと一ヶ月が過ぎた店「たくや」。お握りと惣菜の店としてスタートしたのですが、いざ始めたとたん、お握りと惣菜などでは全然上がり(売り上げ)が悪くてダメということを再確認。なぜ再確認という言葉を使うのかといえば、開店前の私の試算からは、もともとお握りと惣菜などでは客単価が低すぎて話にならないことがミエミエだったから。
 お握り200個、惣菜三回転くらいでもさせなければ、利幅悪くて客単価の低い品目の経営はなりたたない。しかし、そんな理想的な数字を期待できる実体ではない。別の方策は、いざふたをあけてからでないと打ち出せない。
 このような、かなり切迫した見切り発車の開店でした。日々スリルとサスペンスに富んだはらはらドキドキものの営業を見守り、自ら厨房を仕切り、朝から夜まで休み無く(私としてはめずらしく真面目に)働きまくりました。
 が、やはりダメなものはダメ。ははははは!と笑って、あっさり切り替えてみました。お握りではなく、玄米弁当、雑穀弁当と、サンドイッチの店に。早い話がお握り屋ではなくて、ただの「ご飯やさん」。お握り屋が1ヵ月もたたないうちに玄米弁当とサンドイッチ(パン)の店に返信するのですから、も〜いい加減といえば、これほどいい加減な楽しくもおバカな話はないのですが…。でも、経営者(潤ちゃん)の背に腹は変えられない。勝手に玄米弁当とパン(サンドイッチ)に切り替えてからは、上がりはかなりましになりました。売れないものは主軸であったはずのお握りと言えども、情け容赦なくリストラする鬼の弘子でございました。(もともと、最初から潤とは、開店当初のドタバタが過ぎたら、玄米を始めようねと話だけはとり決めていたのです)。

 店の人たちが、もてあまし気味のガラスの冷蔵ショーケースの「改革」。上段にだけ、ぎちぎちに詰めて惣菜を並べ、下段には私の焼き菓子をずらーっと並べて押し込んだ。これで、出来立て惣菜が熱くて(なかなか冷めない)ショーケースに並べられないすかすかの空間もごまかしがきいた。ともかく、下段にだけは焼き菓子と1個売りの裸のサンドイッチが詰まっているのだからガラスケースの中は寂しくないし、見栄えも保てるようになったわけです。和惣菜とお握りの店「たくや」は、ほとんど製菓製パン業者のデリカ同然の姿へとあっさり変換してしまったのですよ!開店してから1ヵ月もたたないというのに…・。潤ちゃん店長も、ともかく売り上げさえ上がれば、お握りになんかこだわらない(=そのくらい苦しいのですよ、彼は)と、沖縄からの電話で申しておった。

 主軸であったはずのお握りをあっさり「売れもしないものは、さっさとやめろ!」と暴言を吐き、潤が沖縄に里帰りしている最中に強引に、玄米弁当とサンドイッチに切り替えて、なんとか売り上げを上向きに引っ張り上げた。沖縄から帰ってきて店に戻ったとたん、潤ちゃん店長の客引きの声が「お握り」から、「自家製酵母パンのサンドイッチいかがですか〜!」に、あっさりと切り替わってしまった。私のほうが…のけぞってしまった。開店から一ヶ月目。店を眺めると、当初の「お握りと和惣菜」とはうって変わって、なんだか訳分からない玄米弁当とサンドイッチの店になってしまっていた「たくや」…なにや?でございました。

 パン作りもサンドイッチ作りも焼き菓子作りも、全部私自身の手作りからしか発生しない品目なので、時間的にも体力的にもますます無理が増してしまいました。で、本日、めでたく「ぎっくり腰」の予兆が体に現れて体調に異変が生じました。やばい。このまま無理を続けると、絶対にあの恐怖の「ぎっくり腰」が出てしまう。ということで、本日私は完全休業。パンもお菓子もサンドイッチも作れない潤を見棄てて店には行かず、家でゆっくりと酒を飲んだり煙草を吸ったりして健康的な静養時間を過ごしたのでございます。明日も復帰できるかどうかは分からない。まだまだ肩も背中もぱりぱりに凝っているし、腰も重い。7日に予定されている雑誌の撮影や原稿も気にかかる。いつまでも無休のボランティアで潤の店にべったりと張り付いている余裕はない。しかし、今手を離すと潤は沈没する。彼の他全ての事業、いやそれのみならず、彼本人すら危うい。どうしよう…。悩むとまた腰がぎっくり、ぎっくりときしみはじめる。
 対応策として、もし、私がいなくなったら、市販のパンを買ってサンドイッチを作るように言っておいた。ルミネ地下のお客は「たくや、なにや?」のパンが自家製酵母だろうが、市販のイーストパンだろうが、なにも認知しているようには思えない。わざわざ苦労して自然発酵種で手間隙かけるほどの価値は今のところ見出せない。日本で自然発酵種を知っていて作れる人など多くは無いし、認知もされてはいない。売り上げの悪い店で私が苦労しなければいけない理由はないのです。
 ちなみに、なかなか晶文社で重版が遂行されない我が駄本の「自然発酵種のパン作り」。あちこちから「入手できない」というクレームが入り続けている。これもかなりやばい。(某大手ネット販売会社ではプレミアがついて、我が駄本が1冊5千円で取り引きされているとツヨシから連絡が入って知らされた!爆笑)。調味料の本は2,3日前に4刷りめの重版の連絡が晶文社から入った。ということは、重版しないという営業方針ではなさそうだ。では、なぜ、パン本のほうは重版されないのか?これもスリルとサスペンスに富んだ憶測が私の頭の中で交錯するのです。たぶん、私のパン種には貧乏神がのり移っているのでしょう。