この季節はたった1日で味噌玉にカビ

 昨日は農文協の雑誌の撮影でした。ムシムシ暑い梅雨時だというのに、秋の号。豆味噌作りを「ぶりかえし」ました。なにせ、秋なんだから。
 昨日の午後に種付けした味噌玉を放置しておいたら、本日の昼にはすでに立派なカビが生えそろいました。種の自家採取をしないなら、もう充分に仕込める状態です。冬のころ(2月)は1〜2ヶ月ほど味噌玉を乾燥させる、などと言っていたのに、今は24時間放置するだけでOKなのです。カビはカビの都合で生えたいように生えてくる。人間の固定するマニュアルの何と愚かなことか。
 逆に言えば、悠長にぼやぼやしていたら、不要な別のカビも生えてきやすいのです。この季節はスローフードじゃなくて、ファーストフードみたいな忙しい仕込みになります。スローフードという言葉の何と愚かなことか。ともかく、発酵食づくりにはマニュアルは無い。微生物という生き物に対応する柔軟性だけが要求されます。カビはお友達。

 豆粒を麹にして醤油や塩水に漬け込む「塩辛納豆」。これも、今、盛り美味しい。醤油と豆味噌の中間のような味で、糸を引く納豆とは全く違います。麹カビの生み出した強烈な旨味がご飯にも、野菜にも、豆腐にも合います。菌の生食いなので、有用な微生物もお腹の中に増やせます。こんな季節は発酵食ですよ。ともかく、良い菌を体の中に増やしておいたほうがいい。ほんじょそこらの食中毒菌などに負けない体にしておくのです。

 撮影のメイン写真は豆味噌の味噌汁と塩辛納豆のお握り。今回はとてもシンプルで渋い。カメラマン氏、味噌汁から湯気をたちのぼらせたくてしょうがないのね。でも、湿度と室温が高いと、写真に写るほどの湯気は立ち昇らないのよ。冬なら立ち昇るんだけれどね。何度やってもNGで、やむなく味噌汁を沸点までゴボゴボ煮立てて、間髪をおかずにお椀に入れて即シャッターを切り、やっとOK。この「味噌汁の湯気立て」で、みんなで苦労して、どどっと疲れた。エアコンの冷房を入れて部屋の温度を20度くらいまで下げることも考えたんだけど、結局は味噌汁のほうの温度を上げた。沸点に達したとたん、味噌汁の香りが、がたっと落ちました。香りが悪くなった瞬間に、お椀に入れる。味噌汁の沸点到達温度とカメラマンのシャッターがきられるのが同時。ここまでくると、連係プレーも神業ですよ。…・で、なんで私、たかが味噌汁の湯気を立ち昇らせるだけで、こんなに死に物狂いにならなきゃいけないのよ?

 料理を仕事にするということは、なかなかは大変なのでございます。