醤油作りの豆糀出芽

 醤油用の豆糀作りのために種付けしてから、なんと6日目。やっと正常カビが生え始めました。枯れ草菌にやられることもなく、乳酸発酵してしまうのでもなく、醤油麹の小さな赤ちゃんたちが生まれた!
 豆味噌などより格段に難しい醤油作り。この10年、何度も何度も失敗して、うまくいったのはたった二度だけでした。でも、手作りの自家製醤油の美味しさは、…もうーこればかりは筆舌に尽くしがたいものがあるのです。発酵食教室の開始に向けて、なんとか醤油仕込みも成功に持ち込みたいと念願していました。普通はもっと早く出芽するのですが、失敗を恐れて水分も湿度も温度も全て控えめに抑制して、待って待って待ち続けて、やっと「成功」を確信しました。この写真で見えますか?白や黄色のカビが。これが熟すと緑がかってくる。最後は全体が緑がかったカビに覆われるのです。全体が覆われるまで、あと2,3日かかります。豆味噌の菌とは別で、醤油用の菌が種です。でも、豆味噌の麹とよく似ています。本当はもっと大豆を潰さなければいけないのですが、これも失敗を恐れて潰しはかなり控えめ。普通はもっと豆が潰れています。(そのほうがカビの生え方も早くて盛大なので。)今回は全て抑制気味だったのが成功への方向性だったようです。今までは、なるべく早く、なるべくたくさんカビを生やそうとして、保温保湿に神経質になりすぎていたようです。

 醤油、味噌、酒、酢、パンなどを美味しく作り上げる元々の根源は、全て「カビ」なんですよ。カビと言っては気持ち悪いと感じる人が多いので、微生物と言っていましたけどね。
 カビが無ければ、塩か砂糖か油でのみの調理になります。私たちの美味しい食生活が、いかにカビたちの生命活動の上に成り立っているか。発酵要素のない料理のなんと味気ないことか。

 現在、味噌や醤油などの基本調味料(つまり発酵調味料)のほとんどは輸入材料に薬品と化学調味料を添加して2週間程度で作り上げてしまう速醸品で、本当の発酵食ではありません。きちんとまともな作り方をしている業者など、極わずかの少数派です。いうなれば経済社会の中では「あぶれもの」になっている。
 そのようなホンモノは簡単には入手できないので、日本人でありながらも、本当の日本の味、伝統調味料の美味さを全く知らない人がほとんどです。これって、とても残念なことだとは思いませんか?私はとても残念なんですけど。とてもヤバイことだと思っているんですけど。スーパーに並ぶ、発酵食ならざる速醸仕上げの味噌もどき、醤油もどき、みりんもどきの山々山々…。あのようなものを平気で口にしておきながら、一方で外国への「グルメツアー」ですって。

 貧しいよね。

 とは言うものの、醤油はなかなか手作り成功率が低かった。今年の晩秋には醤油絞りと、自家製醤油をふるまうことができると思います。
 目の前の辛さと格闘しつつも、来るべき時を夢見るのでございます。