本仕込み2ヶ月目の豆味噌

 ひっこく、ねっちっこく、本日三度目の更新です。

 今年、年頭に仕込んだ豆味噌です。これで2ヶ月目ほど。(あたしゃ、元旦早々、豆味噌仕込みと大掃除だったもんね。なんて人間だ!)

 教室で仕込んだ皆さんのものも、これと似たような月齢です。

 これは、切り返しをして手入れした使用「後」です。

 で、この使用「前」は…。

 お見せできぬ惨状。

 ともかく、水分補充をしたあとは、ずぼらこいて2か月近くも放って置きっぱなしだった。中蓋の上に重石をのせると、種水と言って豆味噌の水分(これがのちに溜まり醤油になる)が上がってくるんだけれど…。その種水の上に「ちりめんシワ」状の野生酵母系カビが、ウジャウジャ湧き上がっていたのよ!

 じーっと見ると、プルプルって身震いするような、かなりキモイやつ。

 あ、でも、悪さする子じゃないよ。毒性はないです。アクすくいの網などですくい取って廃棄します。漬物などの水分の上にも湧くカビで、うちの田舎では「醸り」って呼ばれているんだけどね。標準語で何と呼ぶか分からないので、「野生酵母系のカビ」って、私は言うようにしているわ。(産膜酵母)

 「コウボ」って聞くと、心中「あ、そうか、悪い奴じゃないんだな」と思ってもらえるでしょ。パン作り人間にとっては、お友達みたいなカビだわ。

 で、その「お友達」にお引き払いいただいた後に、きれいになった種水を全体に回しいれるように、よくかき混ぜておくのよ。それが「切り返し」。

 中蓋をかぶせて重石をのせ、蓋をかぶせて、また、お休みなさ〜い。

 ずぼらこかずに、この切り返しは、最低でも月一回はやったほうがいいですよ。

 招かざる客のお友達を放置しておくと、そのお友達の上に、たくさんの悪友が集まってくるのよ。それを放置しておくと、悪の病巣がどんどん深まっていき、味噌そのものも、ぜーんぶ悪友たちに侵されてしまうの。(これも経験済みです)。

 泣きを見ないためには、やはり、産膜酵母は見つけ次第、お手入れするほうがいいですね。少しなら混ぜ込んでしまっていいけれど、分厚くなっていれば、取り除いてください。

 コウジカビは、青カビと生態が近いので、悪友・第一号は青カビちゃんの場合が多いわ。

 豆味噌をブルーチーズにするつもりがないのでしたら、青カビも目のカタキにして取り除きましょう。いくら青カビ生やしても、しょせん豆味噌はチーズになりませんしね。

 たった2ヶ月目の赤ちゃん豆味噌ですが、もうすでに、味噌らしい素晴らしい香りを立てていますよ。味も旨味が出ています。

 この段階で味見すると、すごく塩辛いのですが、発酵が進むほど塩辛さが旨味に変わっていきます。これは、塩の塩化ナトリウムが、発酵で生み出されたアミノ酸やグルタミン酸と結合し、「塩化」部分が化学変化して「アミノ酸ナトリウム」とか「グルタミン酸ナトリウム」などに変わるためです。

 この前の教室でも、パン生地の塩分で同じような話をしましたね。発酵未然のパン生地は、塩や砂糖などの調味料の味が前面に出ていて塩辛いけど、発酵させると塩気がひっこむ…と。これも、発酵によるナトリウムの化学変化です。

 自然発酵種の酵母パンづくりを上達させたければ、遠回りで無駄なことに思えるかもしれないけれど、麹や味噌や漬物、梅干し、干物なども楽しみがてらに手掛けてほしい。

 そのほうが、酵母菌とは何か、本当に自然でウマい酵母パンとは何か、発酵とは何か、命につながる生きている食べ物って何かが分かりやすいと思うのよ。

 味噌や漬物などを手掛ける人は、比較的スムーズに小麦粉と水だけで、ピュアなパン種を起こせるわね。もちろん、野菜や果物や酒粕なんぞ他のものを一切使わなくてもね。

 酵母パンおたく、パン酵母フェチにだけはならないでくださいましね。たかが、パン種ごとき、たかが酵母パンごときですよ。私たちは大らかに、したたかに、柔軟に、ガハハハハと笑いながら、楽しく美味しく作ればいいだけのこと。

 楽しくて美味しければ、それでいい。
 

合わせ味噌

 豆みそづくりのSOSメールが、あちらこちらから、ちらほらと入っています。みんな、頑張っているんだね。うまくいくといいけれど…。

 昨年、晶文社から上梓した拙著「和・発酵食づくり」に詳しく書いておいたので、ご参照なさってください。

 コウジカビが正常に生えた味噌玉の匂いは、森のキノコにそっくりな良い香りがします。納豆や、オヤジの古靴下みたいな臭いではありませんよ。

 味噌玉が臭いと感じたら、不要な菌に侵されたものです。白や黄色のカビが生えても、臭いのは別の菌も同居しているからです。臭い味噌玉を塩水で本仕込みしても、臭い豆みそが出来上がるだけです。(私、経験済みです)。

 SOSメールには、写真を添付してください。その際は、引いて全景、接写でアップ、そして味噌玉を割って中の断面図、この三つがあると、少しは判断つきやすく、少しは役立つアドバイスができるかもしれません。電気やフラッシュを当てず、自然光で撮ってください。(色の判断のため)。

 本仕込みした味噌玉は、1か月足らずでフルーティーな良い香りを立ち上らせます。すでに、豆みその香りなんです。1,2カ月たって、かき混ぜても、良い豆みその匂いがしないものは、味噌玉の段階で、不要な菌に侵されてしまったものです。

 ですから、味噌玉づくりの段階で、適正に判断することが大事です。不慣れなうちは、廃棄とゼロからのやり直しやむなき…ということも起きるのです。めげずにね。失敗から学びとるわけよ。わたしゃ、そうしたけどね。

 さーてと。

 合わ味噌の話です。

 3年熟成の豆味噌と、1年物の玄米麹味噌を2:1くらいの割合で合わ味噌にしています。これ、フードプロセッサーでやると、メチャ簡単。すり鉢も、すりこぎ棒も、味噌こし網も不要になります。

 画像右上が豆味噌、その左が玄米味噌、手前左がフードプロセッサーに両方の味噌を入れたもの、その右が、ガーして出来上がった合わせ味噌です。

 豆味噌は、そのまま常温で置いておくと、空気に触れる表面部分に酵母系のカビが着きやすいのよ。

 でも、コメ麹の味噌を少し混ぜ込んでおくと、あーら不思議。表面にカビがつかなくなるんですよ。

 大きな保存容器から出した小分けの味噌をこのように合わせ味噌にしておくと、カビも来ず、常温保存できて便利です。

 味噌こし不要で、すぐに料理に使えますしね。

牡蠣の味噌漬けその後

 牡蠣の甘味噌漬けを食べ終わった後のお楽しみが、これです。

 画像の材料は季節外れのナスなんですけどね、でも、できれば、旬の野菜のほうが良いでしょう。

 ブロッコリーや春キャベツなどが、ええんじゃないかい。玉ねぎや牛肉なんかも入れてさ。冷蔵庫整理で古いナスが出てきたので、使っちゃっただけだよ。いつ買ったのかは忘れた。たぶん、特売で安くなっていて、つい魔がさして買ったものだと思うよ。

 濃縮された牡蠣の旨味エキスたっぷりの味噌炒め。

 そう、残った甘味噌の漬け床のほうが、むしろお目当てだったのよ、あたくし。

 市販のオイスターソースって、ちょいと人工的な味なので、あまり使いたくないの。(まあ、常備はしておりますけれど)。

 でも、甘味噌漬けの牡蠣の旨味はホンマもんよ。

 牡蠣の味噌漬け食べ終わったあとには、最高にウマいオイスタ−ソース調味料が残るという寸法。

 一挙両得料理です。