乾燥味噌玉の長い旅路

 さて、話は戻ります。乾燥法で放置されている味噌玉は1週間近くたとうとしています。干す期間が長くなるので、気休めの埃よけよしてネット付きの干し網に安置しております。(だから〜、気休めだってばー。こんなもので埃が避けられるわけないじゃん。せいぜいハエなどの虫除けになる程度ですよ)。…〜だから〜、…ネットなんて無くていいのですよ。もし、神経質になるのでしたら、本仕込みの塩漬け間際に味噌玉の外側を流水で洗い清めればいいだけの話です。

 乾燥という、その過程すらも定まらぬ長い旅路に出た味噌玉は、遅くても2ヵ月後には「塩漬け」という港に寄港して安らぎます。だから、大丈夫。でも、その先には「豆味噌」になるという長い旅路が、またまっているのですけれどもね。どのみち、先を急ぐたびではありません。ゆっくりと、ゆるゆると、時間が流れるのを待ちましょう。

 発酵食を生み出していると、なんていったらいいのかなあ…本来的なイキモノとしての本当の時間というものを抱擁している気持ちになります。無理とか、頑張りすぎとか、…してはいけないのね。本来的な時間からはみ出して先に行こうとすると、必ず失敗や危険が待っている。
 目に見えない微生物の世界が「あなた、何か、まちがっているんじゃないの〜」とか、…ふと、いろいろなことを教えてくれる。

 でもね、そうこう、のんびりもできないし。

 上弦の月。如月五日月の夜です。三日月から少し肉付きのよくなったお月様。味噌玉は新月・朔の夜の日に仕込みました。新しく生まれてくるお月様と目に見えない小さな命を結び付けたくて。生徒には言えない私の中の時間の流れ。でも、今年からは教室のみんなとも、そんな時間を共有したいなあ…と考えました。

 今月一杯で今までの教室は修了。でも終わりの終了ではありません。月ごもりになり新月になり、またお月様が」出てくるように、生まれてはそだち、成熟して消えて…。そして、また生まれてくるようなお月様みたいな教室になりたいです。

 今月(三月)31日(金)は、太陰暦でいう本来的な上巳、つまり桃の節句。お雛様です。私はこの日に、今まで10年間続けた「自然発酵種の酵母パン教室」を終わりにします。そして、同時に次の新しい教室を開始したいです。その夜は(陰暦3月3日なので)三日月夜です。

 三日月お月様が応援してくれますように。

糠にマメ

 3月に入り、温かくなってきたら糠みそ漬けを再開します。冬の間、手入れせず休眠させていた糠みその中の菌たちを目覚めさせる時期です。

 で、…こいつらが、なかなかお目覚め遅いんだなあ〜。糠みそに比べると、ウチの娘などは本当に寝起きの良い子だったなあ〜。

 まず、糠床の上のほうだけを取り除いて(捨て)、糠、塩、水分を足してよくかき混ぜて、塩分と水分の調整を行います。(ほどよい塩加減と固さを回復させましょう。)

 さて、その後です。私は糠床の復活材料として、酒粕を混ぜ加えるのです。糠床1kに対して5,60gくらいだから、大量ではないのですけれどもね。酒粕が、死んだように眠っている糠床の元気を回復させるのに大いに役立つことに気づいたのは近年です。これを入れると、居眠り糠床はメキメキとお目覚めになる。酒粕はイキのいいやつをしんちゃんからもらった。(美味しい酒粕だった。娘が甘酒大好きなので、甘酒も作りました。)糠床のイキがよくなるからと言って、調子に乗ってたくさん入れすぎると、糠漬けではなく粕漬けみたいな漬物になっちゃうから気をつけてね。
 そのあとは、鰹節やアゴ煮干、昆布や唐辛子などの旨味だしを適量混ぜ加えます。鰹節やアゴなどの動物性だし材料は旨味も強いけれど、その個性も強いです。使いすぎてしまうと「あ、鰹節の味」なんて、隠し味がばれてしまう。これは、ちょっと悔しい…です。

 そこで、マメ。蒸し大豆なのですよ。大豆は働き者で、陰役者として旨味だしの役目も果たすのです。春味噌仕込みに用意した大豆を一握りか二握りほど、糠床の中に混ぜ込んでみてください。

 野菜を漬け始めて3,4日目から、とても美味しい糠漬けを食べ始めることができます。(3,4日間は塩なれしていないので、塩気が先立つような味です。その間は捨て漬けをしてもいいでしょう。)